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トラックドライバーの「2024年問題」

「週刊東洋経済」(2022年5月21日号)
「週刊東洋経済」(2022年5月21日号)

   「週刊東洋経済」(2022年5月21日号)の特集は、「崖っぷちの物流」だ。このままではドライバーが消え、日本の物流は崩壊しかねない、と強い危機感を表している。冒頭のある長距離ドライバーの給与明細が衝撃的だ。

   2年前まで長距離ドライバーだったAさん(40代男性)の2018年6月の勤務の実態は過酷だった。関東―関西を9往復した。労働時間は月間で約268時間。休憩時間も含めた高速時間は410時間を超えていた。

   総支給金額は約32万円だったが、基本給はわずか7万5000円。これは珍しいことではなく、運送会社による「定額働かせ放題」が横行している、と労働組合関係者は指摘している。「どれだけ働いても月給は30万円程度で上がらなかった」として、長距離ドライバーを辞め、近距離ドライバーになった。

   業界の構造として、国内の運送会社の99%が中小・小規模企業で、宅配大手や物流大手など元請けを頂点としたピラミッド構造の中でしのぎを削っている。

   1990年に施行された物流2法を機に、新規参入する運送会社が1.5倍まで増加。その結果、運賃のダンピングが横行し、そのシワ寄せがドライバーの給与を抑えることにつながった。

   行政は長時間労働の是正に動き、24年4月からはドライバーにも年960時間を上限とする残業規制が適用される。その場合、今までと同じドライバー数では対応できる荷物量が減るため、「2024年問題」と呼ばれている。

   50代以上の就業者が全体の約46%を占め、29歳以下はわずか12%にとどまる。このままではドライバーが27年には24万人が不足、30年には物流の供給不足が36%に達するという予想もあるらしい。

   これまで運賃を買いたたいてきた荷主の責任も大きい。

   船井総研ロジの赤峰誠司取締役は「今後2~3年間でおよそ3~4割の運賃値上げを荷主は覚悟すべきだろう」と話している。

   また、過酷なドライバーの労働環境についてのリポートを見ると、運転だけではなく、待機の強要や手作業での荷下ろし、商品陳列まで理不尽な要求が行われていることにも驚いた。

   残業規制は運送業界に大きな影響を与えそうだ。

   長距離の運行もリレー形式でドライバーを交代させる必要も出てくるものと見られる。福山通運の小丸成洋社長は、ダブル連結トラックの拡大や専用貨物列車の活用が避けられない、と話している。

◆安い配達料のシワ寄せなのか?

   一方、ネット通販の拡大によって増える宅配便。元請けの下に複数の事業者がぶら下がっている実態にふれている。

   「ほとんどの配送案件では3次請けまで存在しており、ひどい場合は7次請けまで出てくる」というから驚きだ。複数の事業者が中間搾取するため、末端のドライバーの報酬は当然少なくなる。

   ある例を示している。大手EC事業者が示したのは日当4万円という好条件だったが、元請けと2時請けが手数料を抜き取った結果、実際に運送会社(3次請け)が得た運賃は2万8000円、ドライバーが手にしたのは2万3000円だった。

   トラックやドライバーを一切抱えない「水屋」という仲介だけをなりわいとする業者も多いという。

   「もはやひとごとではない」と荷主主導で進む現場改革も紹介。コンビニ大手のローソンではAIが最適なトラックのダイヤグラム(運行表)を作成、これを配送会社に提供し、店舗配送ルートの効率化に取り組み始めた。

   また、フードデリバリ―大手のウーバーイーツは、ローソンからの商品の配送を受託。自転車で届ける「爆速EC」が伸びているという。

   安い配達料のシワ寄せがドライバーの負担になっていることを消費者は知る必要があるだろう。ネットで注文すれば商品が届くシステムはいつか崩壊するかもしれないのだ。

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