「そんなに中国は悪いのか!」。中国経済が急失速している。2022年5月16日、中国国家統計局が発表した「経済統計」が世界にショックを与えた。
なんだかんだ言っても、今年秋には習近平指導部の最大の行事である共産党大会がある。「経済の安定」を手土産に「3期目」を狙う習近平氏が、経済の減速を許すはずがないという「安心感」が金融市場にあった。
ところが、その共産党大会とオミクロン株が予想以上の経済悪化を招いているとエコノミストたちは指摘する。いったい、どういうことか。
民主主義の国なら「回避できる経済悪化なのに...」
5月16日、中国国家統計局が発表した多くの経済統計は、金融市場の予想以上に中国経済が悪化していることを示していた。
たとえば、4月の鉱工業生産は前年同月を2.9%下回った。3月はプラス5.0%だったから、急激な落ち込みだ。しかも、約2年ぶりの減少で、中国が初めて新型コロナの大打撃を被った2020年1~2月(前年同期比13.5%減)以来の落ち込み幅となった。
自動車生産が前年同月を43.5%も下回った。サプライチェーン(供給網)が滞り、原材料などの調達ができなかったからだ。工作機械(前年比マイナス16.8%)、産業用ロボット(同8.4%)、半導体(同12.1%)、スマートフォン(同3.8%)と、軒並み生産が鈍化した。経済の「体温」を映すとされる発電量も4.3%減った。
サービス業の不振が目立ち、4月の生産指数は6.1%低下、小売売上高も11.1%減少した。雇用も悪化した。失業率は6.1%と6か月連続で前月を上回った。このうち16~24歳の若年失業率は18.2%と、過去最悪を更新した。
こうした事態をエコノミストたちは、どうみているのだろうか。
日本経済新聞(5月16日付)「中国景気、ゼロコロナの傷深く 4月生産・小売り悪化」という記事につく「Think欄」の分析・考察コーナーで、東京財団政策研究所主席研究員の柯隆(か・りゅう)氏は、「景気悪化には避けられないものと回避できるものがある。本来なら中国の景気はここまで悪化しなくて済むはず」として、中国が「民主主義の国」でないことを指摘した。
民主主義の国であれば、行き過ぎた政策は野党の批判や追求などから修正に向かっていくからだ。しかし、「中国国内のメディアやネットをみると、ゼロコロナ政策の勝利を謳歌する記事が満載」と指摘。「傷がさらに深くなるだろうな。(中略)中国経済の減速は世界経済に大きく響いてしまう」と嘆いた。