決済手段乱立時代の生き残りに「秘策」あり! 百貨店カードの新スタイルをつくるJFRカード 二之部守社長に聞く(後編)

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   「JFRカード」(大丸松坂屋カード)がリニューアルして、2022年1月にリニューアル1周年を迎えた。それに合わせて実施したキャンペーンなどが、ユーザーから好評を得ている。また、独自ポイントプログラムである「QIRA(キラ)ポイント」がオトクに貯まる、地域の対象店も着々と増えている。

   そんなJFRカードがさらなる成長に打って出る、次なる一手が「新しい金融サービス」だ。暮らしと決済、そして保険商品や金融資産の運用相談と提案を担う、「百貨店カードの新たなスタイル」を提案していく。J.フロント リテイリンググループで、決済・金融事業を手掛けるJFRカード株式会社の二之部守社長に聞いた。

  • 「2030年には金融事業を収益の柱に」と話すJFRカードの 二之部守社長
    「2030年には金融事業を収益の柱に」と話すJFRカードの 二之部守社長
  • 「2030年には金融事業を収益の柱に」と話すJFRカードの 二之部守社長

2030年、「金融事業」を確固とした収益の柱に

決済手段乱立時代の生き残りに「秘策」あり! 百貨店カードの新スタイルをつくるJFRカード 二之部守社長に聞く(前編)>の続きです。

――JFRカードは、これからどのように変革していくのでしょうか?

二之部社長「親会社のJ.フロント リテイリングの事業計画では、以前の『クレジット金融事業』の名称から『決済・金融事業』に少し前から変更しました。これは、当社の事業をクレジットとしてとらえるだけでなく、決済を活用して顧客層を拡大していく事業にシフトしたことを意味します。
   そのためには、ポイントプログラムを活用した顧客拡大に加え、保険や証券、投資信託などの金融商品の取り扱いを増やすことを目指しています。金融商品は、残高を積み上げると安定的な収益につながります。収益が出るまでに時間はかかりますが、2030年には確固とした収益の柱になるのを目標としています」

――金融事業はどのように推進していくのでしょうか?

二之部社長「金融事業では、保険や投信、株式などを取り扱っていきます。お客様には富裕層や準富裕層が一定数いらっしゃいます。そのセグメントのお客様のニーズとして、しっかり将来に向けて資産を貯めていきたい、増やしていきたいというニーズに対応していく狙いがあります。とくに、家族の健康への懸念や不安などの日々の暮くらし全般に対して、きちんとした『相談に乗るプラットフォーム』をつくる必要があると考えています。それをもとに、お客様のニーズに合ったかたちで、商品を提案、提供できればと思います」

――それに対する課題は何でしょうか。

二之部社長「金融はかなり専門的な領域ですので、カード会社の金融サービスとして、役割を明確にして進めていく必要があります。当社の立ち位置は、お客様の生活に近いところにあります。たとえば、お客様のお子さんが小学校に入れば、ランドセルを買いに百貨店に訪れます。そこで、お父さん、お母さんには、将来のための子供のための学資保険を紹介するような展開も考えられます。
   また、ランドセルを買うのは、おじいちゃん、おばあちゃんというケースも多いと思います。シニア世代の場合、日常や介護、相続などの心配ごとがあるものです。そこで、ランドセルを買いに店頭に来てくれた時、たとえば、『ランドセル選び、入学が楽しみですね』と話しながら、おじいちゃんやおばあちゃんに『お困りごとはないですか?』『膝が痛いことはありませんか?』などと相談に乗って関係を深めていく、そういう接し方ができると思います。
   百貨店はお客様との距離が近く、これは銀行や証券会社、保険代理店の店頭ではあまり考えられないこと。ぜひとも、お客様に寄り添いながら、ニーズに合った保険や投信などの金融商品の提案につなげていけたらと思います。金融商品のプロになるのでなく、『お客様の相談に乗るプロ』になりたい。そうすることで、金融機関とは違ったアプローチができると考えています」

「あたらしい幸せ」を目指して...日々のくらし、将来のくらしに寄り添う

――具体的な取り組みに向けて動きはありますか。

二之部社長「お客様の相談に乗ることに対して、リアルとデジタルの両面で取り組んでいます。リアルの場合は、百貨店内にお客様の相談に乗れるようなブース、ラウンジ、個室などを設置しています。これは設備投資を伴います。今が、まさに投資のタイミングだと考えています。
   そしてデジタルでは、お客様への情報提供として、オンラインセミナーを配信しています。テーマはたくさんあります。たとえば、女性のためのがんセミナー、マネーセミナー、相続セミナー、もうちょっと健康になるセミナー、猫の飼い方セミナー、インテリアのワークショップなどです。金融や保険が中心ですが、暮らしに関連したセミナーも開催しています。
   たとえば、親の認知症を扱うセミナーは人気です。ちなみに、すべてアーカイブがあり、過去の分もいつでも好きなときに視聴できます。セミナーは今年、前年の倍ぐらい開催する予定です。店舗でのブースやオンラインでのセミナーを通じて、お客様に寄り添っていけたらと思います。
   事業の変革には時間がかかりますが、徐々に軸足を移していく。それが、J.フロント リテイリング全体の戦略と合致していれば、スピード感をもって進んでいけると思います」
二之部守社長は「カードを通じて、『日々のくらし』と『将来のくらし』に寄り添っていきたい」と話す
二之部守社長は「カードを通じて、『日々のくらし』と『将来のくらし』に寄り添っていきたい」と話す

――店舗でのショッピングに加えて、保険・投信などの金融商品などの購買につなげるための課題は?

二之部社長「2点あります。1点目は、DXやITの時代にあっても、人が果たす役割は大きいと思います。そのため、人材育成が重要であり、課題です。
   たとえば、さきほどもお話しした『暮らしの相談』の場面。ランドセルを買ったときに、お母さんが『この子が大学に行ったとき、お金はどうしたらいいのかな』という話があったら、『学資保険や積立投信もやりましょうか』などと、相手の立場で相談に乗ってあげられることが大事ですよね。そのためには、スタッフは知識や経験を積み重ねていくことはもちろん、スキルを持ったスタッフの力も必要です。
   2点目は、カード決済を利用していただくこと。ランドセルの購入場面で、必ずしもすぐに金融商品のお話はできないでしょう。相談に乗るにも商品を紹介するにも、商品の購入データがあってアクションがとれるのです。そういう意味でも、カードで決済していただくのはとても重要になります。そして大切なのは、『いいタイミング』であること。『いいタイミング』でお客様から相談を受けることも、データを活用できる部分です。ですので、カード決済を通じて、データベースを作り上げていくことがカギとなります」

――最後に、JFRカードの未来像を教えてください。

二之部社長「今、J.フロント リテイリング全体のビジョンとして、『くらしの「あたらしい幸せ」を発明する』を掲げています。コロナ禍もあって、どんどん時代も変わり、お客様のニーズは絶えず変化していきます。そのため、常に『あたらしい幸せ』を作って提供していきたい、そんな思いを込めています。
   そのうえで、JFRカードには2つのミッションがあります。1つ目のキーワードは『日々のくらし』。毎日のくらしを楽しくしていく、ということです。そのために、店舗のある地域のお客様にとって、おトクな『地域ポイント』を通じて、その地域で働く人たち、住む人たち、遊びに来る人たち、あるいは企業やお店と一緒になって、幸せで、楽しい日常生活をサポートしていきたいと考えています」

――おトクな「地域ポイント」はまさに、『くらしの「あたらしい幸せ」』の発明ですね。

二之部社長「そして、2つ目のキーワードは『将来のくらし』。結婚や出産などライフステージごとにさまざまなライフイベントがあり、それぞれの場面でお客様の相談に乗っていく。将来のくらしにおいても、お客様の安心をつくるお手伝いができればと思います。もっと言うと、心配ごとや不安を解決していきたい。私たちは、日々の暮らしだけでなく、将来のくらしも楽しく安全、安心なものにしていきたいのです。この2つのミッションを果たせる企業でありたいと思っています。
   百貨店には、おばあちゃん、お母さん、娘さんと、家族が何代にもわたってショッピングにいらしてくださいます。それは、これまで培い築いてきた信用や安心感があるからです。ランドセルを買いに来るのは象徴的で、絶対に一人で買いに来ませんし、家族のイベントの1つになっていますよね。そんな強みを活かして、『日々のくらし』と『将来のくらし』に寄り添っていきたいと思っています」

(聞き手 牛田肇)



【プロフィール】
二之部 守(にのべ・まもる)

JFR カード株式会社 代表取締役社長 兼 J.フロント リテイリング株式会社 執行役

東京大学文学部卒業。ニューヨーク大学経営大学院 MBA 修士課程修了 ファイナンス専攻、1986年にアメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本支社入社。2000年11月同社グローバル・ネットワーク・サービス 日本/韓国地区副社長。05年8月トラベラーズチェック・プリペイドサービス副社長などを経て、11年9月、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのビジネスデベロップメントⅡのヘッド。15年10月ビジネス・アドバイザリー・サービス代表、17年2月Origamiアドバイザーを経て、18年3月から現職。
1961年生まれ。

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