企業経営ではこの「三原則」を肝に銘じて
三原則その1は、最優先はやはり「安全性」です。
繰り返しになりますが、これは何をおいても外せないものであり、どんなに素晴らしい製品やサービスを開発し、取り扱っていようとも「安全性」に問題ありと感じさせてしまうのなら、その段階で顧客は確実に自社から離れていくことになるということです。
その2は「快適性」です。
「安全性」の確保をはかったのちに経営が持つべき対顧客視点は、自社の製品、サービスをこれまで以上に快適にご利用いただくためにどのような改善をはかるべきか、ということです。
「快適性」改善に終わりはなく、そのために常に利用者目線で製品、サービスを見て、正直な顧客の声が集まるしくみをつくることも大切です。「快適性」の向上は、経営者一人が考えるのでは限界があり、社員全員が同じような考えをもって、自己の仕事と向き合える社内風土を作る必要があります。
社内風土づくりは一朝一夕にはいきません。トップの率先垂範と、コツコツと根気よく言い続ける愚直な努力がポイントとなります。
その3は「経済性」です。
「安全性」「快適性」を向上させることで、自社の製品、サービスは「選ばれうる」ものになります。しかし、「選ばれうる」が、確実に「選ばれる」になるためには、「経済性」の向上が必要になります。
「経済性」とはすなわち価格のこと。製品、サービスの「快適性」からみて、納得性の高い価格であるかということです。価格は安ければいいのかといえば決してそうではなく、「快適性」に比べて安すぎると感じられてしまう価格設定は、むしろ「安全性」に不安を感じさせることになりかねません。
適正かつ一定の経営努力を感じさせお得感のある価格設定が、望ましい「経済性」ということになります。
この「対顧客対応のあるべき三原則」の中で、「安全性」だけが若干性格が異なります。「快適性」「経済性」が欠けることだけならば、大きな顧客離れにはならないでしょう。
しかし、「安全性」の欠如が明らかになった場合、著しい顧客離れを招くことになり企業経営に致命的なダメージを与えるであろう点です。「安全性」がいかに重要なことであるのか、この点からも分かると思います。
知床観光船の事故は、顧客起点の経営の観点から、運営会社は致命的なミスを犯していたと言えるわけで、同社の別事業である旅館業も含め廃業に追い込まれることは確実でしょう。一日も早い行方不明者の発見と事故原因の全貌解明を願っています。
(大関暁夫)