決済手段乱立時代の生き残りに「秘策」あり! 百貨店カードの新スタイルをつくるJFRカード 二之部守社長に聞く(前編)

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百貨店ポイントの「価値」を高める手法を模索

――厳しい百貨店業界ですが、百貨店カードの存在感を高めていくには、どうすればいいのでしょう?

二之部社長「カード利用で大きな誘因となるのが、ポイント施策だと思います。やはりポイントはお客様にとっては魅力で、百貨店のカードもずっと取り組んできました。
   もっとも、現在の百貨店を取り巻く環境は、売上が消費全体の中で絶対額が落ちているとともに、消費の中でのシェアも低くなっています。たとえば、eコマースのショッピングは20兆円ぐらいの市場規模があります。一方で、百貨店業界はピークで9兆円7000 億円近くあった売り上げが、最近は4兆4000億円ほどです。現に、お客様は以前なら百貨店で買ってきたものをオンラインで買うようになってきています。
   ということは、さらに百貨店の売り上げが減り、シェアが低くなったら、百貨店で利用できるポイントの価値も相対的に落ちていくことになります。つまり、ポイントの価値自体は変わりませんが、ポイントの利用価値が縮小していくということです。端的にいえば、貯めたポイントが使われなくなってしまうのです。そのため、それを補っていくような、お客様に対して、魅力あるサービスを提供することが喫緊の課題だといえます」

――そこで、JFRカードではどのような戦略でサービスを展開しているのでしょうか。

二之部社長「弊社では、百貨店は『大丸・松坂屋のポイント』、パルコは『PARCOポイント』、GINZASIXは『GINZA SIXポイント』、そして、当社のカード独自の『QIRAポイント』など、さまざまなブランドのポイントがあり、それらグループのポイントをつないでいく戦略をとっています。これにより、まずはグループ内で、ポイントの利用価値を高めていきます。それこそがまさに、2021年にスタートした独自のポイントプログラム「QIRA(キラ)ポイント」の狙いでもあります。さらに、加盟店でカードを利用すると、おトクにポイントが貯まるスキームを立ち上げて、加盟店事業を拡大しています。貯めたポイントは、加盟店の『地域ポイント』として地域で利用できるようにする仕掛けになっています」

――「地域ポイント」について詳しく教えてください。

二之部社長「名古屋の栄地区には、J.フロント リテイリングが松坂屋とパルコ、商業施設のBINO(と、2026年完成予定の複合施設)を運営していますが、JFRカード加盟店のレストランやヘアサロンなどもたくさんあります。こうした特定の地域でJFRカードを利用するとポイントがたくさん貯まり、使えるサービスというわけです。このように、地域に特化して展開しようと考えています。現在設定している重点エリアは、大阪心斎橋、京都烏丸、神戸元町、名古屋栄、上野御徒町の5エリアです」
二之部社長は「百貨店カードでは貯めたポイントが使われなくなってしまっている」と話す。
二之部社長は「百貨店カードでは貯めたポイントが使われなくなってしまっている」と話す。

――こうした戦略の狙いは何でしょうか。

二之部社長「当社の強みは、店舗を構えている東京駅、銀座、上野、名古屋栄、大阪の心斎橋や福岡といった地域だと思います。日本全国で勝負をしようとは思っていません。また、地域といっても、たとえば東急沿線の二子玉川や自由が丘では勝負しません。私はいつも『局地戦』と言いますが、戦場を広げてしまうと、戦えなくなってしまうからです。また、競合のカード会社と同じようなことをゼロから始めても、同じ結果には絶対になりません。しかも今は、スマートフォンから決済できるため、ドコモ、au、さらにはPayPay、楽天といった新たなライバルが出てきました。もう時代が変わっているのです。やはり、『ここで勝つ』と定めて、まずは局地戦で戦って、小さい勝利を重ねていく。そのために私たちのビジネスは、地域を重点エリアとしていくことが必要だと考えています」

   <決済手段乱立時代の生き残りに「秘策」あり! 百貨店カードの新スタイルをつくるJFRカード 二之部守社長に聞く(後編)>に続きます。

(聞き手 牛田肇)



【プロフィール】
二之部 守(にのべ・まもる)

JFR カード株式会社 代表取締役社長 兼 J.フロント リテイリング株式会社 執行役

東京大学文学部卒業。ニューヨーク大学経営大学院 MBA 修士課程修了 ファイナンス専攻、1986年にアメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本支社入社。2000年11月同社グローバル・ネットワーク・サービス 日本/韓国地区副社長。05年8月トラベラーズチェック・プリペイドサービス副社長などを経て、11年9月、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのビジネスデベロップメントⅡのヘッド。15年10月ビジネス・アドバイザリー・サービス代表、17年2月Origamiアドバイザーを経て、18年3月から現職。
1961年生まれ。

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