「経済安保法」で中国・ロシアに勝てるのか? 専門家が2つの「弱点」指摘...「情報保護の甘さ」「自由経済の強み失う」

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中国の国家資本主義に対抗するため、自由経済を捨てる?

経済安全保障法を成立させた岸田文雄首相
経済安全保障法を成立させた岸田文雄首相

   一方、経済安保法全体をエコノミストはどう見ているのか。国家資本主義に近づき、政府の過度の介入によって企業の活動が委縮してしまう恐れがある、と指摘するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏のリポート「経済安全保障推進法成立へ。企業活動への過剰関与のリスクも」(5月11日付)では、「基幹インフラへの国による事前審査」と「国民生活に不可欠な特定重要物資の指定」の2点に問題点があるとした。1点目の「国による事前審査」は――。

「(14業種の)企業が重要なシステムを導入する際、設備の概要や部品、維持・管理の委託先などの計画を、主務大臣に届け出ることが義務づけられる。(違反した場合)『2年以下の懲役か100万円以下の罰金』が科される」
「(企業にとって)気候変動リスクへの対応と同様に、いずれ取引先企業の『特定重要設備』をチェックするように求められるようになる可能性も考えられる。そうなれば、大企業あるいは大手銀行の負担は一層高まることが避けられない。また、中小・零細企業も対応を迫られる。それらは企業の収益を圧迫することも考えられるところだ」
経済安全保障法が自由経済を委縮させなければよいが(日本経済団体連合会会館)
経済安全保障法が自由経済を委縮させなければよいが(日本経済団体連合会会館)

   2点目の「特定重要物資の指定」には、国家資本主義的になり、市場主義の強みを失うリスクもあると警告する。

「日本の経済安全保障政策は、米国その他先進諸国と協力して、中国を封じ込める戦略の一翼を担うものだ。国家が経済活動に深く関与する国家資本主義の中国と競争するため、市場主義の先進各国の政府が、民間企業の活動への関与を強める方向にあるのが現状だ。これは、先進国が国家資本主義に接近していく流れとも見える」
「その過程では、企業の自由な競争、活動が様々なイノベーション、生産性向上を生み出すという市場主義の強みが失われてしまう恐れがあるのではないか。多くの罰則が適用される(中略)ため、企業が過剰に活動を控えてしまう恐れもある。企業の自由な活動を極力制約しないよう、対象範囲をできるだけ限定することが必要だ」

そう求めている。

(福田和郎)

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