情報担当者の「身体検査」が外された理由は?
それはともかく、欧米諸国では整備されていた「経済安全保障」が初めて法制化されたとあって、5月12日付主要新聞の社説は「経済安保の法的枠組みを整えたのは一歩前進」(日本経済新聞社説)、「官民の連携で産業と技術守れ」(読売新聞社説)などと評価する論調が目立った。
ただし、一番の問題点は機密情報制度の取り扱い資格である「セキュリティ・クリアランス(適格性評価)」の導入を見送ったことだ、と指摘するメディアが少なくない。
セキュリティ・クリアランスとは、政府などの機密情報を取り扱う職員に対して、その適格性を確認する制度。組織内でのポジションが上がり、機密度が高い情報に接する頻度が高まるにつれ、家族や交友関係などを徹底的に身辺調査する。いわゆる「身体検査」で、欧米では一般的に行われている。
今回、見送った背景について、ロイター通信(5月11日付)「アングル:機密資格見送り、経済安保法の成立優先 参院選後の焦点に」では、「(セキュリティ・クリアランスは)個人情報保護の観点から慎重論も根強い」としたうえで、政府与党には2013年に強行採決して成立した特定秘密保護法の苦い教訓がある、と指摘する。当時、成立後も市民の間で抗議活動が続いた。
この記事によると、ロイター通信の取材に応じた与党関係者は「特定の人を排除するという見方や、特定秘密保護法のときのように秘密が増えるのではという懸念が生じる可能性を鑑み、今回は導入を見送った」と説明した。