「ついに暗号資産を法定通貨にする国も!」「ロシアの経済制裁の抜け道は暗号資産か?」
暗号資産がニュースにならない日がないくらいだが、実際のところ、日本人はどのくらい暗号資産を持っているの?
モバイル市場専門の調査会社「MMD研究所」が2022年4月26日、「仮想通貨(暗号資産)に関する調査」を発表した。
それによると、スマートフォンを持っている20歳~69歳のうち「9%」が暗号資産を持って経験があるという。それって多いの?少ないの?
「知ってる」7割、「理解してる」3割
暗号資産とは、インターネット上で流通する電子的な資産のこと。「仮想通貨」とか「バーチャルマネー」とも呼ばれる。仮想通貨の規制のため2020年5月、資金決済法が改正されたのを機に法令上は「暗号資産」と呼ばれるようになった。現在、世界に2000種類近くあるといわれる。
24時間365日インターネットを通じて取引できるため、世界的に拡大した。エルサルバドルや中央アフリカ共和国のように、暗号資産「ビットコイン」を法定通貨にする国も現れている。日本でも日本銀行が昨年(2021年)4月、「具体的な計画はない」としながらも、将来の普及を見据えて「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)の実証実験を始めた。
さて、MMD研究所の調査では、スマートフォンを所有する男女8800人にまず、暗号資産の認知度を聞いた。すると、最も多かったのは「暗号資産(仮想通貨)という言葉は聞いたことがあるが、内容はよく知らない」が37.9%、「全く知らない」が32.6%、「だいたいどんなものか分かるが、購入・保有したことはない」が17.3%、「購入・保有したことがある」が9.1%となった。
これを消費者の購入意欲を「認知」⇒「興味・関心」⇒「比較・検討」⇒「購入・申込」と分解する「ファネル分析」という手法でみると、「認知」は67.5%、「内容理解」29.6%、「保有経験」は9.1%ということになる。
ドイツの調査会社スタティスタ(Statista)が昨年2月に世界74カ国で実施した「グローバル消費者調査」によると、暗号資産の保有経験が一番高い国はナイジェリア(32%)で、次いでベトナム(21%)、フィリピン(20%)と続き、最下位は日本とデンマークの4%だったという。別の調査なので単純比較はできないが、前述したMMD研究所調査の「9.1%」という数字と比べたら、現在ではかなり普及が進んでいるということだろうか。
保有は収入に比例、年収1500万円以上は4割
暗号資産の保有状況を、性別・年代別にみると、「保有経験」があるのは男性30代が19.3%と最も多く、次いで男性20代(18.2%)、男性40代(14.3%)と続く。女性では20代が8.4%と一番多いが、全体的の男性のほうが多いことが目立つ=図表1参照。
また、保有状況を年収別にみると、興味深いことがわかった。「保有経験」があるのは1500万円以上(40.0%)が最も多く、次いで900万円~1500万円未満(18.6%)、600万円~900万円未満(16.6%)。年収が上がるにつれて保有経験者が多かったのだ=図表2参照。
続いて、暗号資産を保有したことがある799人に、利用したことがある暗号資産取引所アプリを聞くと(複数回答)、「bitFlyer」(26.7%)と最も多く、次いで「Coincheck」(24.8%)、「楽天ウォレット」(19.3%)、「GMOコイン」(18.4%)、「DMM Bitcoin」(12.4%)となった=図表3参照。
一気に最高値から半減することもある変動の激しさ
ところで、急速に普及している暗号資産には、コインの裏表のようにメリット、デメリットがはっきりしている。
暗号資産取引所アプリの利用経験者440人に、まずメリットを聞くと(複数回答)、「少額で投資できる」(46.1%)と最も多く、次いで「いつでも取引が可能」(36.8%)、「世界中で使える」(25.7%)、「資産を持ち運ぶ必要がない」(24.1%)となった=図表4参照。
一方、デメリットのほうは――。「変動が激しくリスクがある」(44.1%)がやはりダントツに多い。次いで、「手数料が高い」(30.5%)、「セキュリティに不安がある」(29.8%)、「FX(外国為替証拠金取引)や株式投資に比べて税率が高い」(28.2%)、「確定申告が必要な場合がある」(27.3%)となった=図表5参照。
「変動が激しくリスクがある」といえば、米国株市場暴落のあおりを受け、代表的な暗号資産「ビットコイン」の価格が5月10日、一時3万ドルを下回り、2021年11月につけた過去最高値(6万9000ドル)の半値以下となったばかりだ。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが景気を冷やすとの見方が強まり、資金が流出したからだ。そんなリスクが暗号資産の宿命なのか。
アンチ暗号資産派の人気投資が「iDeCo」の理由は?
さて、「暗号資産以外に利用している投資がある」と答えた2888人に、投資内容を聞くと(複数回答)、暗号資産保有経験者は「株式投資」(51.8%)が最も多く、次いで「投資信託」(42.8%)、「FX(外国為替証拠金取引)」(22.9%)となった。
一方、暗号資産を持った経験のない者は「株式投資」(42.4%)、「投資信託」(38.3%)と1位、2位までは保有経験者と同じだが、3位に「iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)」(16.1%)が入ったのが特徴だ=図表6参照。
暗号資産に目を向けなかった人は、「iDeCo」のほうが「FX」よりは堅実とみたのだろうか。両者の違いがここに表れているようだ。
調査は、スマートフォンを所有する20歳~69歳の男女8800人を対象に2022年4月12日~4月13日にアンケート調査した。さらに、暗号資産取引所アプリ利用経験者440人などに集中的に聞いた。
(福田和郎)