ウクライナ侵攻が戦争の姿を変える
「週刊エコノミスト」(2022年5月17日号)の特集は、「防衛産業&安全保障」。ジャベリン、ドローン、そして核兵器。ロシアによるウクライナ侵攻が戦争そのものの姿を変え、安全保障の根幹を揺るがしている事態をリポートしている。
「撃ちっ放し」が特徴の携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」は、キエフからロシア軍を撤退に追い込んだことで知られる。だが、ジャベリンの米軍への配備開始は1990年代後半で、目新しい兵器ではないという。むしろ、使い道のない「古い兵器」と称されたというから驚く。
今、脚光を浴びたワケは、正規軍同士の地上戦へと戦争の形が回帰したことを意味する、と同誌は書いている。ゲリラ相手には使えない兵器だったのだ。ジャベリンを共同で生産する米防衛企業ロッキード・マーチンの株価はウクライナ侵攻後、15%高と伸びている。
ITが防衛産業の姿を大きく変えているとも。
ウクライナ側による民生用ドローンの活用によって、ジャベリンによる攻撃の効果が上がったという。ウクライナ側はIT企業の力を借り、ドローンの映像情報を集約するセンターを作ったとされる。また、米起業家イーロン・マスク氏がCEOを務める米宇宙企業スペースXの衛星インターネットサービス「スターリンク」も使われた模様だという。
世界の軍事費は今後も当面、増え続けることは確実で、防衛産業への需要も高まる、と予測している。
このほかに、「台湾侵攻の虚実 到底足りない中国軍の兵力 習政権に大ばくちは打てない」というジャーナリスト・谷田邦一氏の寄稿、「ロシアの露骨な『脅し』効く 排除できない小型核の使用」という毎日新聞専門編集委員・会川晴之氏の寄稿も、興味深かった。
今回の「戦争」は、兵器と軍の実力を露わにしたという点で、まれに見る「実験場」となったのは間違いない。防衛産業と安全保障はウクライナ後、一変するかもしれない。
(渡辺淳悦)