米国経済の今後占う2つの「物価指標」に大注目
さて、そのG7を主導した米国経済は今後どうなるのか。リポート「米国の2つの物価指標に注目!」(5月9日付)と訴えるのは、J.P.モルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト前川将吾氏だ。
前川氏は、米国が長期のスタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存)に陥るか、それともインフレから脱却できるか、近々発表される、以下の2つの調査結果に注目しようと呼びかける(図表3参照)。
(1)4月の米国の消費者物価指数(CPI、5月11日発表予定)
「市場予想は前年同月比で8.1%(3月は8.5%)。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIも同6.0%(3月は6.5%)と、ともにピークアウトが見込まれています。このような好材料が期待される一方、前回の結果で伸び鈍化が好感されたコアCPIの前月比が市場予想のプラス0.4%(3月はプラス0.3%)から上振れないかなどには注意が必要です」
(2)5月の米ミシガン大学の消費者調査(5月13日発表予定)
「1970年代のような深刻なスタグフレーションが再来するリスクを見極める上で、多くのエコノミストや投資家は、米国の中長期のインフレ期待が上昇していくことを強く警戒しているため、同調査の『5年先』の予想インフレ率の結果も注目したいところです=再び図表3参照。4月は3.0%で引き続き落ちついていましたが、仮に大きく上昇すれば、高インフレの定着や想定以上の利上げが意識される可能性があります」
米ミシガン大学消費者調査とは、米国の消費者マインドを探る代表的な経済指標で、ミシガン大学が毎月発表する。300~500人を対象にしたアンケート調査だ。対象人数が少ないので月ごとの振れ幅が大きく、発表のタイミングも早いことから、経済動向の先行指標として市場関係者から注目される。指標が予想より強ければ米国経済は好調とみなされ、逆に弱ければ不調とみなされる。
5月4日、FRB(連邦準備制度理事会)が利上げを決めた直後、金融市場は予測どおりに利率だったため、1000ドル近い株高になった。ところが翌日には一転、1000ドル以上の下落となった。前川氏はこの投資家心理の疑心暗鬼に触れて、こう述べている。
「この背景には、『インフレ&金利上昇と景気減速という2大リスクの懸念は、結局のところ今後の経済・物価指標でしか和らげられない』との見方があると考えられます。この観点から今週はこの2つの物価指標に注目です」
今後の世界経済を占ううえでも、2つの物価指標に大いに注目したい。
(福田和郎)