日本株の半年後を表す「中国景気の指標」の現状とは
同じく、「中国経済の減速が今後の焦点となる」と指摘するのは、第一生命経済研究所の主任エコノミスト藤代宏一氏だ。藤代氏のリポート「日本株 中国ロックダウン解除に期待」(5月10日付)の中で、まず今回の米国株暴落の原因をこう分析する。
「米国株の年初来パフォーマンスはS&P500がマイナス16.3%、NASDAQ(ナスダック)がマイナス25.7%と下落が鮮明。昨年(2021年)9月時点でほとんど意識されていなかった利上げが現実のものとなり、年末年始に恒例の『仰天予想』にすら登場しなかった10回相当(0.25%)の利上げが金利先物に織り込まれるなど、短期間に金融政策のコンセンサスが激変したことで投資環境が悪化している」
このため、「通常はおカネの逃避先として最上位に位置づけられる米国債は、日増しに高まる利上げ観測に晒(さら)され、さながらリスク性資産のような扱いに成り下がった」という。そして、「逃げ場を失ったおカネはコモディティ(貴金属・エネルギー・農産物などへの投資)や暗号資産にも流れず、キャッシュに戻っている」というのだ。
現在、6月と7月に0.5%の利上げが予想され、9月も0.5%の利上げが意識されている状況だ。「当面は引き締め警戒感が強いままだろう」と藤代氏。そして、
「金融市場の重苦しい雰囲気が変わるきっかけとして中国経済の好転が考えられる。不可解なほど厳格なロックダウン(上海)によって中国経済は停滞を強いられており、5月9日に発表された4月の貿易統計では輸入の前年比伸び率がゼロになるなど(中略)、改めてゼロコロナ政策の経済的破壊力を浮き彫りにした」
と、チャイナリスクの恐ろしさを強調する。
ところで、藤代氏は、中国の景気動向と日本株が見事に連動していることをデータで示している。図表2は日経平均株価と中国クレジットインパルスの比較グラフだ。クレジットインパルスとは、名目国内総生産(GDP)に対する新規貸し出しの伸びを示しており、中国当局の経済政策に対するスタンスを映す鏡とされる。6か月~12か月後の株価にも先行するとみられているのだ。
この図表2を見ると、日本株に明るい兆しがあると藤代氏は指摘するのだ。
「中国のマネー関連統計(マネーストック、社会融資総量)は日本株と一定の連動性を有する。当局の政策態度が緩和方向に傾き、資金調達が容易になると、インフラ投資の増加を通じて製造業の生産活動が上向くことで日本企業(株式)に恩恵が及ぶと考えられる」
「クレジットインパルス(≒新規与信GDP比、前年差)が上向きに転じていることはポジティブ。日本株の先行指標として、先を読み過ぎている嫌いはあるものの、いざロックダウンが解除されれば、中国経済の正常化期待が芽生え、株式市場の空気も好転する可能性がある」