2022年5月、大学生・大学院生の就職活動状況は早くも追い込み段階に入ったようだ。新型コロナの拡大が一段落、「対面」での面接も復活し、企業側も過去2年間、思うようにできなかった若い人材確保に本腰を入れ始めたからだ。
就職情報サービスの「学情」(東京都千代田区)が2022年5月6日、2023年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に「内々定(内定)率調査」を発表したが、4月末時点での内定獲得率は6割近い56.9%に達し、前年同時期より4.6ポイント上回ることがわかった。3月末よりプラス21.9ポイントと大きく伸びており、就活戦線は急ピッチで動いている。
「4社以上内定」が6人に1人
調査によると、「現在までに内定を獲得したか」と聞くと、56.9%が「はい」と答えた。前年同期は52.3%だったため、4.6ポイントを上回っている=図表1参照。また、内定者の文系・理系の比較を見ると、理系71.0%(前年同期63.3%・プラス7.7ポイント)、文系49.7%(前年同期46.6%・プラス3.3ポイント)と、理系のほうが内定獲得のスピードが早い=図表2参照。2月までは文系のほうが早かったから、3月で一気に逆転したことになる。
また、「累計で何社、内定を獲得したか」との問いには、「1社」が最多で42.8%。次に「2社」が23.7%、「3社」が18.1%と続く。「4社以上」も15.4%、約6人に1人おり、スタートダッシュが早い学生は絞り込みに入っていることがうかがえる。1人あたりの内定獲得平均社数は2.31社で、昨年同時期の1.89社を大幅に上回っている。
また、内定企業1社の学生に「内定獲得企業への入社意思はあるか」と聞くと、「強く入社を希望する」が35.7%となった。これは、昨年同時期よりも9.7ポイント下回った。一方、複数の企業から内定を得ている学生に同じ質問をすると、「強く入社を希望する」という答えが60.2%と、昨年同時期よりも12.4ポイントも上回った。
これは、就職環境が昨年よりも良い状況なので、1社の内定では納得せず、複数の企業から「いい返事」を獲得する学生が増えているとみられる。
「内定を得た企業の業種」を訪ねると、ダントツの1位が「IT・ソフトウェア・インターネット」(21.8%)、次いで「教育・福祉・その他サービス」(16.4%)、「建設・住宅関連」(11.2%)、「医薬品・化粧品・日用品」(7.5%)と続く。
情報関連業界は、優秀な学生は海外からも引っ張りだこなので、企業も早くから獲得に動いたようだ。
就職活動を終える学生が増えてきた...絞り込み段階へ
就職活動がもはや終盤戦に入ってきた「証拠」として、「就職活動率」の変化が注目される。
「現在、(インターシップなどの)就職活動をしているか」を聞くと、まだ行っている学生は73.6%と、4月(89.2%)をピークに減少傾向にある。文系・理系を比較すると、とくに理系(58.0%)は、文系(84.2%)よりも大幅に活動を縮小しており、就職活動を終える学生が増えてきた。絞り込み段階に入りつつあることがわかる=図表3参照。
一方、企業側も「囲い込み」段階に入ったようだ。「内定先企業から懇親会などフォローがあったか」を聞くと(複数回答)、「懇親会(対面)」(17.9%)、「懇親会(オンライン)」(37.2%)、「先輩社員との面談(オンライン)」(23.2%)、「人事担当者との面談(オンライン)」(25.7%)と、オンラインの活用を中心に内定者に活発に接触してきている。
なかにはいよいよフィニッシュ段階に近づいたのか、「誓約書の提出を求められた」(17.2%)、「内定者専用のSNSを案内された」(10.4%)、「就職活動の終了を依頼された」(8.4%)という学生も増えてきた。なお、最後の項目は、就活学生を悩ませる「オワハラ」(就職活動を終わらせることを強要するハラスメント)として、最近、社会問題になっている行為だ。企業側にコンプライアンス遵守を求めたい。
調査は2022年4月26日~4月30日、23年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生543人を対象にインターネットでアンケートした。文理男女別の回答格差をなくすためにウエイトバック(母集団の構成比に合わせて集計する方法)を行った。
(福田和郎)