2年ぶり貿易赤字が意味するもの...円安加速→収支悪化→さらに円下落の「悪循環」、貿易赤字拡大は避けられないのか?

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   日本の貿易赤字の拡大が止まらない。2021年度における、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5兆3749億円の赤字になった。2年ぶりの赤字で、貿易収支の悪化がさらなる円安を招き、それが円安を加速するという悪循環に陥る気配だ。

  • 2021年度は輸入額、輸出額ともに過去最高を記録(写真はイメージ)
    2021年度は輸入額、輸出額ともに過去最高を記録(写真はイメージ)
  • 2021年度は輸入額、輸出額ともに過去最高を記録(写真はイメージ)

原油高の影響から輸入膨張...前年度比33.3%増

   財務省が2022年4月20日発表した貿易統計速報によると、21年度の輸入は、原油や液化天然ガス(LNG)が大幅に伸び、前年度比33.3%増の91兆2534億円と、比較可能な1979年度以降で最高になった。

   原油が、数量ベースでは4.6%の伸びだったが、金額は97.6%増の8兆155億円に拡大。LNGも、数量は6.4%減ったものの、金額は58.8%増の5兆27億円となった。石炭は金額で約2.1倍になった。

   一方、輸出は、コロナ禍からの経済再開で、鉄鋼が62.7%増の4兆1363億円、自動車が12.8%増の10兆7308億円、半導体製造装置が33.9%増の3兆5606億円など、大きく膨らんだ。輸出全体では23.6%増の85兆8786億円と、これも79年度以降で最高だった。

   同時に発表した22年3月の貿易収支は、4123億円の赤字だった。赤字は8か月連続。半導体などの供給不足の影響が和らぎ、輸出全体は前年同月に比べて14.7%増の8兆4609億円と好調だった。一方、原油高の影響で、輸入は前年同月比31.2%増の8兆8733億円に膨らんだ。

海外経済の回復の遅れが、日本の輸出の足かせに

   問題は今後の見通しだが、貿易赤字の拡大は避けられないとの見方が一般的だ。

   まず、日本の輸入を押し上げている原油などの資源価格の高騰だ。ロシアのウクライナ侵攻後、原油の国際指標である北海ブレントの価格は一時、1バレル=140ドル水準まで跳ね上がり、足元では100ドル超で推移している。世界銀行の予測では、2022年は年間平均1バレル=100ドルと、前年比42%上昇、23年も92ドルと予測、長期にわたって高止まりするとみている。

   原油以外の資源、穀物などの値上がりも続き、輸入額を押し上げる。

   これに対して輸出では、柱である自動車が伸びていない。新型コロナのオミクロン型の拡大などで東南アジアからの部品調達に支障が出て、国内自動車工場の生産が抑えられている。

   輸出全体を左右する海外の景気動向は、コロナ禍からの回復で急成長が期待されたが、ウクライナ問題もあって、陰りが見えている。

   国際通貨基金(IMF)は4月中旬に世界経済見通しを改定し、22年の実質成長率は世界全体で3.6%と1月の前回予測から0.8ポイント引き下げた。

   米国が0.3ポイント下げて3.7%、ユーロ圏が1.1ポイント下げて2.8%。中国も0.4ポイント下げ4.4%としたが、コロナ感染拡大で都市封鎖が広がるなど下振れリスクが強まっており、さらに減速する懸念がある。海外経済の回復の遅れは、日本の輸出の足かせになる。

   これに、円安の急伸で輸入への支払額が増えていることも加わり、22年度も貿易赤字が続くとの見方が強い。

   日銀が金融緩和政策の修正に慎重なことから、円安がさらに進んで貿易赤字が膨らみ、それがさらに円安を加速するという悪循環に陥る懸念も広がっている。 (ジャーナリスト 済田経夫)

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