海外経済の回復の遅れが、日本の輸出の足かせに
問題は今後の見通しだが、貿易赤字の拡大は避けられないとの見方が一般的だ。
まず、日本の輸入を押し上げている原油などの資源価格の高騰だ。ロシアのウクライナ侵攻後、原油の国際指標である北海ブレントの価格は一時、1バレル=140ドル水準まで跳ね上がり、足元では100ドル超で推移している。世界銀行の予測では、2022年は年間平均1バレル=100ドルと、前年比42%上昇、23年も92ドルと予測、長期にわたって高止まりするとみている。
原油以外の資源、穀物などの値上がりも続き、輸入額を押し上げる。
これに対して輸出では、柱である自動車が伸びていない。新型コロナのオミクロン型の拡大などで東南アジアからの部品調達に支障が出て、国内自動車工場の生産が抑えられている。
輸出全体を左右する海外の景気動向は、コロナ禍からの回復で急成長が期待されたが、ウクライナ問題もあって、陰りが見えている。
国際通貨基金(IMF)は4月中旬に世界経済見通しを改定し、22年の実質成長率は世界全体で3.6%と1月の前回予測から0.8ポイント引き下げた。
米国が0.3ポイント下げて3.7%、ユーロ圏が1.1ポイント下げて2.8%。中国も0.4ポイント下げ4.4%としたが、コロナ感染拡大で都市封鎖が広がるなど下振れリスクが強まっており、さらに減速する懸念がある。海外経済の回復の遅れは、日本の輸出の足かせになる。
これに、円安の急伸で輸入への支払額が増えていることも加わり、22年度も貿易赤字が続くとの見方が強い。
日銀が金融緩和政策の修正に慎重なことから、円安がさらに進んで貿易赤字が膨らみ、それがさらに円安を加速するという悪循環に陥る懸念も広がっている。 (ジャーナリスト 済田経夫)