「光通信に替えないと、家の電話が使えなくなりますよ」と高齢者を不安にさせる詐欺が増え始めている。2年後にNTTが固定電話のIP(インターネット・プロトコル)網化を進めることに便乗しているようだ。
今後、被害が急増しかねないため、国民生活センターは2022年4月26日、警鐘を鳴らすリポート「このままでは固定電話が使えなくなる!?それって光回線の『便乗』勧誘かも」を発表した。いったい、どういう手口なのか。
固定電話はピーク時の3割以下に激減
NTT東日本とNTT西日本は2024年1月から2025年1月にかけて、固定電話をIP網に順次移行する。IP網とはコンピューターネットワークを使った通信サービスで、現在の固定電話網(PSTN)と異なり、距離は関係ないため通話料は市外電話でも市内電話と同額の3分9.35円となる。
NTTがなぜIP網化を進めるのかというと、携帯電話やLINEなど無料通話アプリの普及で、固定電話が激減しているからだ。ピーク時の1997年度に6322万件だった契約数が2019年度には1850万件と、ピーク時の29%に減った。このため、固定電話網の中継交換機を維持することが困難になった。その対策が中継交換機を中継ルータに入れ替えるIP網化なのだ。
入れ替え作業自体は、NTTが局内設備の切り替えを行うだけだから通話料金の変更はあるものの、利用者側に手続きや自宅での工事は必要ない。電話番号もそのままだ。しかし、ここに詐欺師が付け込んでくる。IP網と仕組みがよく似た「光回線」の名前を出し、「光回線に切り替えないと、おたくの固定電話は使えなくなりますよ」と不安をあおるのだ。
IP網への切り替えは2年後というのに、早くもこんな事例が相次いでいる。