「FRBの利上げは対インフレ政策として不十分」
一方、米国の物価高の深刻さを報じるのは、朝日新聞(5月2日付)「家賃1.7倍『もうNYを出る』」という記事だ。
23歳の家庭教師氏は、ニューヨークのアパートに友人2人と暮らす。家賃は約2300ドル(約30万円)。月収は約3000ドル(39万円)だが、「3人で割れば1人800ドル(10万4000円)以下」と、昨年4月入居した。しかし、今年2月に示された新家賃は7割超の値上げで3950ドル(約51万円)。1人約1300ドル(約17万円)になり、「収入の4割以上が家賃で消えれば暮らしていけない」とニューヨークを出ることを決めたというのだ。
ところで、今回のFRBの利上げ決定。エコノミストたちはどう見ているのだろうか。
朝日新聞(5月6日付)の取材に応じた米スタンフォード大学のジョン・テイラー教授は「対インフレ対策としては不十分だ」としてこう述べている。
「FRBが(中略)0.5%の利上げを決めた判断は、正しい方向だ。ただし、米国のインフレ率は8%超。それなのに政策金利が1%ではほとんど意味がない。FRBは、景気を刺激も抑制もしない『中立金利』は2~3%としている。政策金利が中立金利を下回る限り、インフレは止まらない。少なくても政策金利は3%を超える水準が必要だ」
同じく朝日新聞の取材に応じた丸山義正・SMBC日興証券チーフマーケットエコノミストは「世界景気は今後減速感が出る」としてこう述べた。
「世界経済にとっては、今年末や来年にかけて減速感が出てくることにつながる。日本経済にも米国向けの輸出が落ちてくるなど、影響が出るだろう。(中略)円安に振れるリスクがあり、9月までは1ドル=135円まで進む可能性がある。急激な円安は、輸入物価が高騰する一方で企業の価格転嫁は追いつかず、よくない」
また、日本経済新聞(5月6日付)「NYダウ一時1300ドル安 金融引き締め『軟着陸』に不安」という記事につくThink欄「ひとこと解説」コーナーで、マネックス証券専門役員チーフ・アナリストの大槻奈那氏はこう解説した。
「先ほど、南米チリの中央銀行が政策金利を1.25%引き上げ8.25%とすると発表しました。昨年6月時点の0.5%から、恐ろしいピッチでの利上げです。インフレ抑制のためやむなしとの判断のようですが、果たして脆弱な新興国が環境変化にどこまで耐えられるのか...。市場のアップサイドを見るには米国が最先端ですが、ダウンサイドについては、今回の世界経済のアキレス腱である非資源系新興国にも注目しています」