急ピッチの米利上げは途上国の経済を揺さぶる
主要新聞各紙の社説(5月6日付)もFRBの難しい舵取りを注視している。
日本経済新聞は「社説:米インフレ抑制と世界経済の安定両立を」の中で、その難しさをこう指摘した。
「米経済の行方は不透明だ。深刻な供給不足で3月の消費者物価は前年比8.5%上昇した。人々のインフレ心理が強まり、FRBが過度の利上げで景気を冷やす『オーバーキル』も警戒される」
「急ピッチの米利上げは世界経済を揺さぶりかねない。コロナ禍による生活苦に、燃料や食料の値上がりが重なる途上国への影響は、とりわけ深刻だ。米量的緩和の縮小を巡り市場が混乱した2013年の教訓を生かし、FRBは周到に市場と対話する必要がある」
2013年の教訓とは、当時のベン・バーナンキFRB議長の名をとって「バーナンキショック」と呼ばれる。
バーナンキ氏は「量的緩和縮小は時期尚早」という声明文を発表、安堵した市場は株高で反応した。ところが、「ハト派」と思われたバーナンキ氏が議員との質疑応答の中で突如、「経済情勢によっては量的緩和縮小もありうる」と発言したため、市場は茫然とした。リーマン・ショック以来の大暴落となった。FRB議長の発言はこれほど重く、かつ慎重を要するというわけだ。
読売新聞も「社説:世界経済のリスク点検怠れぬ」の中で、「利上げでインフレ抑制を図るのは重要だとしても、米景気を冷やすようでは困る。FRBは国内外の経済に目を配り、金融政策の舵取りをしてほしい」と注文をつけた。というのも、世界経済へのリスク要因が目白押しだからだ。読売新聞はこう続ける。
「ロシアのウクライナ侵略で、資源や食料の価格高騰に拍車がかかっている。(中略)『ゼロコロナ政策』を掲げる中国では、上海などが都市封鎖を行っている。『世界の工場』と言われ、巨大市場も抱える中国の生産や消費の停滞は今後、世界に深刻な影響を及ぼすとみられる」
日本への影響も心配だ。「日本にとっては、米国の利上げが一段の円安をもたらす可能性があることも不安材料だ」と指摘した。
読売新聞は「インフレ封じ躍起」(5月6日付)という記事の中で、米金融大手ウェルズ・ファーゴのサム・ブラード氏の「FRBはインフレを『一時的』と見誤り、(金融緩和の修正に)明らかに出遅れた。金融引き締めに積極的にならざるを得ない」という指摘を紹介した。
また、米ゴールドマン・サックスによると、第2次世界大戦後に14回あった米の利上げ局面のうち、11回は利上げ終了後2年以内に景気後退を迎えたという。ドイツ銀行の「米経済は来年までに著しい景気後退に陥る」との見通しも紹介している。