肉などを模した「プラントベースフード」という食品が広がっている。
植物(プラント)をベースにしたものだ。J-CASTニュース「代替肉が『定番』になる日、意外と近い?」(2020年2月1日付)でも報じたが、これまで多かった大豆使用の代替肉を使った商品に加え、最近では野菜などで作った「代替卵」など、商品は多彩化している。
プラントベース専門の外食店も増え、こうした外食店向けに植物由来の本格的なデミグラスソースを提供する食品メーカーも出ており、市場は急拡大しそうな勢いだ。
創意工夫でおいしさ追求
カゴメとプラントベース専門の飲食店「2foods(トゥーフーズ)」を運営するTWOは、動物性原料を一切使わない卵「Ever Egg(エバーエッグ)」を使用したオムライスを共同開発したと2022年3月に発表した。エバーエッグは主にニンジンと白インゲン豆を使って製造。通常の卵と違って、熱を加えても固くならず、「ふわとろ」の食感が楽しめるのが特徴だという。
キユーピーは3月から、卵の味わいがあるプラントベースフード「HOBOTAMA(ほぼたま)」の通信販売を開始した。東京など一部エリア限定で始めたが、販売エリアは順次広げたい意向だという。脱脂アーモンドパウダーなどを使い、液卵風とスクランブルエッグ風の2種類を準備。卵料理風のプラントベースメニューが自宅でも簡単に作れる。21年夏に業務用に販売したところ、一般の人から「買いたい」という要望が多数寄せられたことで、市販用に開発した。
ハインツ日本は、ホテルやレストランなど業務用にプラントベースのデミグラスソースやホワイトソースなどを開発し、3月から販売を始めた。デミグラスソースは肉のうまみを凝縮したソースで、植物由来の材料だけで作るのは非常に難しいとされる。同社は野菜のうまみをベースにスパイスや独自製法を駆使した。「ソースさえあれば、専門の飲食店ではない普通の店でもプラントベースのメニューが手軽に提供できるはず」としており、プラントベースの広がりに貢献したいという思いもある。
日本では少子高齢化が進む中でも急成長している市場
プラントベースは健康志向の高まりなどからここ数年、注目を集めてきたが、ここに来て関心の高まりが加速している。
背景の一つには、国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」を重視するムードがある、と言われている。牛や豚などの食肉を育てるには、穀物をそのまま食べる数倍のカロリーの餌が必要だ。そのうえ、牛の反芻で大量のCO2が排出されるし、多量の水資源も使われる。環境負荷を低減するには、プラントベースの活用が有効だと見られているのだ。
環境問題などを背景に、欧米では植物由来食品への関心が高く、すでに世界市場は8兆~9兆円規模に達するとも言われている。日本はまだ数百億円規模とされるが、少子高齢化が進む中でも急成長している市場だ。
「手軽に使えておいしいプラントベースフードが増えれば、消費者の関心をいっそう高められるだろう」(食品業界関係者)と、将来性への期待が高まっている。(ジャーナリスト 済田経夫)