アサヒグループホールディングス(GHD)の株価が2022年4月27日の東京株式市場で一時、前日終値比324円(7.0%)高の4940円まで上昇した。前日に傘下のアサヒビールがビールや缶チューハイなど162品目を値上げすると発表したことを投資家が好感した。
ビール業界は原材料高に悩まされている内需型産業の代表選手。そのトップ企業の同業他社に先駆けての決断を株式市場は歓迎している。
店頭価格はビール類や缶チューハイ6~10%、国産ウイスキー7~17%値上げの見通し
株価は27日安値(4783円)が前日高値(4620円)を上回り、チャートに「窓を開ける」図を描く節目の展開となった。27日の終値(4814円)は前日比4.3%高。日経平均株価の27日終値が前日比1.2%安だっただけに、アサヒGHD株の高騰が目立った。
値上げの内容を確認しておこう。10月1日に対象162品目の卸向け出荷価格を改定する。需要期の夏場を過ぎており、2022年12月期の業績への影響は限定的だ。「スーパードライ」をはじめとするビール類や「贅沢搾り」などの缶チューハイの店頭価格は、6~10%の値上がりを見込む。「シングルモルト余市」など国産ウイスキー10品目は、7~17%上がる見通し。
理由についてアサヒは、大麦やアルミなどの原材料価格が目下の円安もあって高騰していることを挙げている。家庭用ビールの値上げは2008年3月以来、14年ぶり。業務用ビールは2018年3月以来の値上げとなる。
アサヒの試算によると、値上げによって数量で5%程度の販売減を見込みつつも、今期と来期のコスト高は値上げで打ち消したうえ、さらにいくばくかの増益効果が残る。
値上げの早期実施に驚き...「経営陣の危機感の表れ」
ところで、ビール、発泡酒、第3のビールの税率は2026年に統一される。これに向けて段階的にビールは減税、発泡酒と第3のビールは増税になる。
ビールにとって有利な局面が続くなか、アサヒは2022年2月下旬出荷分から、1987年の発売以来初めて「スーパードライ」をフルリニューアルした。新たなスーパードライを定着させるためにも値上げには慎重だろうとみられており、株式市場でも値上げ実施は23年以降との見方が多かった。
このため、値上げ、さらにはその早期実施もいい意味で、驚きとなった。
野村証券は4月27日配信のリポートで「株式市場は2022年12月期の値上げへの期待はほぼ無かったと見られ、今回の発表をポジティブに受け止めるだろう」と指摘した。SMBC日興証券もリポートで「弊社では(値上げは)来春ではないかと予想していたので驚いた。コスト高は当初の想定以上だろうが、早期決断は経営陣の危機感の表れと高く評価したい」と記した。
いずれも高い評価で、当面、アサヒの株価は上値を追う展開が続く可能性がある。(ジャーナリスト 済田経夫)