ホンダの計画のやや心もとない部分とは
ただ、ホンダの計画は、よくよく見ると、やや心もとない部分がある。
まず、日本でのEV化の本格展開に向け、商用の軽EVを突破口としようとしていることだ。
宅配など配送業に使う近距離移動のバンを想定していると思われるが、この分野では、物流大手の佐川急便がベンチャー企業と小型配送用のEVを共同開発し、30年までに約7200台の軽商用車をEV化する計画を打ち出しており、車両は中国で生産するとみられる。
SBSホールディングスも昨秋、中国の小型EVトラックを1万台調達すると発表した。「中国の格安EVと『100万円台』などで価格競争することに、どれだけ意味があるのか」(モータージャーナリスト)との疑問が浮かぶ。
全固体電池も心配だ。
今回の発表で、「2024年に実証ラインを立ち上げ、2020年代後半のモデルに採用できるよう研究を加速させている」と説明したが、はっきりした投資は実証ラインの430億円。発表でも「量産はチャレンジング」と、困難さを率直に認めている。
トヨタは30年までにこの分野だけで2兆円を投じるとしている。また、日産も自社開発を進めており、24年にパイロット生産ラインを導入し、2028年の量産を目指している。ホンダの取り組みが、これら2社に大きく見劣りするのは明らかだろう。
EVをめぐる業界の動きはめまぐるしく、トヨタでさえ、2021年9月に「全固体電池開発に1兆5000億円投資」と発表したのを、12月に投資額を2兆円に引き上げた。このように、一度立てた計画も、EV普及への政治的圧力、世論、ライバルの動向などにより、短時間で修正を迫られることが珍しくなくなっている。
ホンダの今回の発表とて、早晩、修正を迫られる可能性もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)