「その件は考えておきます」「社内で検討しておきます」
これほど営業マンにとって手ごわいセリフはないでしょう。多くのお客様にとって、これは断り文句の常套句です。たいていの場合、本当に考えて、検討していることはないからです。もし、この「考えておきます」「検討しておきます」を言われなければ、すぐに契約してもらえるかもしれませんし、仮に断れられたとしても気持ちを切り替えて次に行けるでしょう。
「即決営業の超準備 売り込む前に売れる!」(堀口龍介 著)秀和システム
商談中、自分のことばかり考えていませんか?
結婚式のスピーチや挨拶で緊張している人がいます。声が震えてのどが詰まり、顔が赤くなり、息も絶え絶えになっています。一方、何百、何千人もの聴衆を前にしても、いきいきと自然体で話せる一般の方もたくさんいます。この違いはどこからくるのでしょうか。
「もちろん慣れもありますが、根本的な原因は『意識のベクトル』の向きです。つまり、緊張しすぎる人は意識が自分に向いていて、緊張しにくい人は意識が目的や相手に向いているのです。これは営業においても同様で、お客様と話すときに過剰に緊張する営業マンは、自分のことばかり考えています」(堀口さん)
「『今日こそ契約を取らないと叱られるな』『間違わずにトークできるかな?』『お客様に嫌われないようにしよう』。意識のベクトルが全部、自分に向いていますよね。こんな気持ちでお客様に会うのは、ただの自己中営業マンです。人見知りだから仕方ないとか、慎重で控え目な性格だから長所でもあるとか言い訳をしても何も変わりません」(同)
堀口さんは、緊張しやすくて悩んでいる営業マンは、まずベクトルの向きを変える努力が必要だと言います。では、どこにベクトルを向けるべきなのでしょうか?
「わかりやすいお手本は、医者や歯医者です。患者と会うのに緊張する医者なんて、見たことありませんよね。医者が考えているのは患者のことです。私も定期的に歯医者に通っていますが、先生はどんなにハードな施術でも涼しい顔でやってくれます。ビクビクしながら歯を削ったり、麻酔注射の位置を迷ったり、患者にこびたりなど微塵もありません」(堀口さん)
「先生は治療だけに集中しています。だから、私は先生を信頼し、安心して任せることができるのです。このように医者は、意識のベクトルを患者と治療に向けています。なぜなら、それが『役割』だからです。役割に徹している人は、必要以上に緊張することがありません」(同)