ピーク時から1万6000軒減少...新型コロナも追い打ち
東京商工リサーチの調査によると、全国の銭湯の9割以上が加入する全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全浴連)の加入銭湯数は、ピーク時の1968年に1万7999軒に達した=図表1参照。だが、高度経済成長期に風呂が各戸に設置された団地や一戸建て住宅が爆発的に増えると、次第に客数が減少していく。
そのため、銭湯の軒数は1969年から減少をたどり、1991年に1万軒、2006年には5000軒を割った。一方、大型の健康ランドやスーパー銭湯が出現、にぎわいをみせた。さらに、常連客の高齢化が進み、高額な設備改修や更新費用もかさんだ。経営者の高齢化も追い打ちをかけ、廃業や転業が増えた=図表2参照。
新型コロナ感染拡大も追い打ちをかけている。「3密」回避の広がりで「入浴客が約2割落ち込んだ」(銭湯関係者)。銭湯の廃業は歯止めがかからず、2022年は1865軒で、これは53年連続の減少。ピークからは10分の1にまで減った。
廃業に歯止めがかからない一方で、2021年度の銭湯の倒産件数(負債1000万円以上)をみると、たった1件だ=再び、図表2参照。新型コロナ関連の資金繰り支援策の効果もあるが、銭湯を運営する事業者の多くは個人経営で、先行きを見越し、体力のあるうちに早めの廃業や転業の選択をしているようだ。また、事業者の多くは不動産を所有しており、銭湯の資産を活用して不動産賃貸業などへ転業するケースが多いという。
現在、円安が加速し、ロシアのウクライナ侵攻の影響で燃料の重油が高騰しており、銭湯の経営悪化に拍車をかけている。
発表によると、東京商工リサーチの取材に、全浴連の担当者は、「(燃料高騰が続くと)廃業の増加に繋がると危惧している。利益の落ち込みで経営者の心が折れるかもしれない」。「常連さんやお年寄りが楽しみにしているから辞められなかったけれど、これ以上運営を続けることができなくなった」と、経営者たちは苦しい胸の内を吐露しているそうだ。