大事なのは「自分たちの作りたい野菜を作る」こと
まえだ農園では、無農薬で動物性堆肥を使わない野菜と穀物を育てている。二人がそれらを使わない理由は至ってシンプルだ。「自分たちが責任を持ってちゃんと説明できるものを作ること」(大串さん)。それは、その野菜や穀物に関わるすべての情報に対して説明できることを意味している。たとえば動物性堆肥を使用した場合、一般的には堆肥になった動物はどこで育ち、何を食べて育ったかなどを知ることができない。
そのため、他所から持ってきた肥料や農薬は使わずに、自分の山にある土や水、草だけを循環利用して、純粋な地場産野菜を作っているというわけ。無農薬だから安心なのではなく、作り手がその野菜がどういった肥料で育ち、その肥料はどうやって作られたかなどをすべての背景を説明できるからこそ、安心と安全が生まれている。
そのことは、白糸の森にある「白糸うどん やすじ」や「森のお菓子屋 緑の詩 ~おと~」で提供、販売されている食べ物も同じである。
「白糸うどん やすじ」のうどんの麺の原料は大豆、天ぷらの野菜、料理に使用されているすべての原料が育った背景までくまなく知っている。畑で採れた新鮮な野菜を使用し、その場で調理して食べてもらう。「白糸の森」では、こうしたば究極の地産地消を味わえるのだ。
「実際に自分たちが食べている物のことを、農業体験を通して少しでも知り、その経験を記憶の片隅にでも良いから覚えておいてほしいと思った」
と、前田さんは明かす。
こうした取り組みが食べ物のみならず、さらなる未来を生む「人への循環」にも繋がっていくと、二人は考えている。