山を切り崩し、畑を作り、野菜を育てる...「生きてる」こと実感できる里山「白糸の森」が人気スポットになったワケ

   海があり山があり自然の恵みを受けた豊かな食材が集まる福岡県糸島。ここに、最近話題のスポット「白糸の森」がある。

   絶景のテラスで食べるとれたて季節野菜の天ぷらうどん、森の中のツリーハウスで飲むコーヒーはまさに至福の逸品。さらに大人から子どもまで楽しめる体験型農園など、さまざまな自然体験を美味しく楽しく感じることができると人気を博している。

   そもそも、なぜ「白糸の森」をつくることにしたのか――。建築関係の仕事をしていた大串幸男さんと居酒屋を経営していた前田和子さんに、その思いを聞いた。

  • 福岡県糸島「白糸の森」にある「森のカフェ」のツリーハウス
    福岡県糸島「白糸の森」にある「森のカフェ」のツリーハウス
  • 福岡県糸島「白糸の森」にある「森のカフェ」のツリーハウス

未経験から始まった土づくり

   今から15年前、前田さんは福岡県糸島市内で居酒屋を経営していた。ある日、工務店の知人がやって来て、こう言った。「前田さん、山を買いませんか?」――。山を所有するなど毛頭なかったため、その場では断った。

   その後、大串さんと前田さんが出会った。二人は根っからの「人好き」ということもあり、みんなが集まって音楽などを楽しめる場所をつくろうと計画していた。そんな折、いつものように二人で何気なくテレビを見ていると、早期定年退職した夫婦が山を買って開拓していくという番組を目にした。即座に「これだ!」とピンときて、自分たちの理想とする未来が明確にイメージできた。

   思い出したのが一度断った、あの山を買い、そこに老若男女みんなが学んで楽しめる「白糸の森」をつくることにした。

   そのときの様子を、大串さんは、

「いま残っている土地や資源は何千年も前から人が関わり大切に残してきたもの。いまの時代にあった形で、環境的にも経済的にも価値があるということを示していきたかったし、未来につながるカタチで伝えていきたかった。だから絶対にやろうと思った。」

と振り返る。

白糸の森のツリーハウスで大串幸男さんに話を聞いた。
白糸の森のツリーハウスで大串幸男さんに話を聞いた。

   手始めに、農業をやってみようと思った。それが、今の白糸の森で基盤となっている。しかし、二人とも農業は未経験で、最初は苦労の連続だったという。長年誰も触っていなかった山の一部を開拓するところからのスタート。竹を切り倒して、畑を確保するのに約1年。そこから野焼きなどで土地を整えるのにさらに半年を費やして、ようやく畑を確保した。

   とはいえ、すぐに種をまいて野菜が育つわけではない。その畑には、野菜が十分に育つために最も大切な「地力」がなかった。そこでまずは土を育て、自然循環の基礎となる地力をつけることから農業を始めた。そうしてさまざまな失敗と成功を繰り返し、やっと自分たちが納得する野菜と穀物を作れる畑ができ上がった。

   それが「体験型農園 まえだ農園」である。

清水一守(しみず・かずもり)
清水一守(しみず・かずもり)
一般社団法人SDGs大学 代表理事/公益財団法人日本ユネスコ協会連盟・ユネスコクラブ日本ライン 事務局長/英国CMIサスティナビリティ(CSR)プラクティショナー資格/相続診断士
日本大学文理学部を卒業。大学では体育を専攻。卒業後、家業である食品販売店を継ぐも新聞販売店に経営転換。地域のまちづくりとして中山道赤坂宿のブランド化を推進した。その後CSR(企業の社会的責任)の重要性を学び、2018年7月から名城大学で「東海SDGsプラットフォーム」として月2回の勉強会を開催中。SDGsを広めるための学びの場として2019年9月に一般社団法人SDGs大学を開校。現在、SDGs認定資格講座やSDGsイベントなどを開催中。
岐阜県出身、1960年生まれ。
一般社団法人SDGs大学
SDGsを広めるために、誰もが伝道師となるような認定資格講座を3段階で設定。SDGsを学ぶきっかけの資格としてSDGsカタリストから始まり、その上位資格としてのアドバイザー資格、さらにカタリストを育成するカタリストトレーナー資格を設け、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsを他人事ではなく、『ジブンゴト』としてとらえ、実践していけるようにSDGsの研究・周知・教育を行っています。校訓として学び・実践・達成・及人を掲げ、物心両面の幸せを追求し、真の『自分ごと』を探求できる学びの『場』として、誰もが参加ができるインラインによる「SDGs大学プラットフォーム」、「SDGsキャンプ」などのセミナー、イベントを提供しています。
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