日本電産→「ニデック」に社名変更、永守重信氏がCEO復帰...短期的に指揮、業績改善目指す カリスマの「後継者」問題も振出しに

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   カリスマ経営者として知られる世界的モーターメーカー、日本電産の創業者である永守重信会長(77)が最高経営責任者(CEO)に復帰した。約10か月前に後継含みで関潤社長(60)にCEOの座を譲っていたが、永守氏の復帰で、「ポスト永守」は振出しに戻った。

  • 日本電産の永守重信会長が最高経営責任者に復帰(写真はイメージ)
    日本電産の永守重信会長が最高経営責任者に復帰(写真はイメージ)
  • 日本電産の永守重信会長が最高経営責任者に復帰(写真はイメージ)

永守氏「今の株価は耐えられない水準」

   2022年4月21日、永守氏と関氏が会見して発表した。永守氏のCEO復帰は同日付。関氏は社長兼最高執行責任者(COO)となる。あわせて、社名を23年4月から、海外で使用している「ニデック(Nidec)」に変更することも発表した。

   永守氏の後継者選定は長年、注目されてきた。2020年に日産自動車COOから転じ、社長に就いていた関氏が21年6月の株主総会を経てCEO兼務になり、永守氏は会長になる新体制が成立。後継に道筋をつけたはずだった。

   永守氏はこの日の記者会見で、同社の現在の株価や業績について「満足できるものではない」と指摘。原材料の高騰や部品不足などを念頭に、「早い決断と対処が非常に必要な段階にきている。創業者で全てを知り尽くしている私が短期的に指揮を執って、業績状況を改善する」と、CEOへの復帰理由を述べた。

   関氏は会見で「正直悔しい。向かい風を跳ね返す力がなかったのは事実。会長との実力差を見た」と語った。日産出身の関氏は、事業の中でも電気自動車(EV)向けを含む車載用モーター事業の拡大を期待されてきたことから、今後は車載モーター事業に専念し、それ以外の事業は永守氏が指揮するかたちになるという。

   日本電産がこの日に発表した2022年3月期決算は、純利益は1368億円と過去最高になり、23年3月期も21%増益の1650億円と連続最高益を見込む。それでもCEO交代に踏み切った最大の理由は、株価の低迷への危機感とされる。

   関氏にCEOを譲った21年6月時点では1万2000円台、9月には1万4000円を付けたが、今回の発表当日(22年4月21日)の終値は8970円。永守氏は会見で「今の株価は耐えられない水準。1万円くらいで残っていれば私の出る幕はなかった」と述べている。

◆参照記事:
J-CASTニュース 会社ウォッチ「日本電産株が急落! 今期予想が最高益更新なのに失望売り CEO交代も市場には届かず......」(2021年04月29日付)

今後の後継レース、早くも取り沙汰

   日本電産は、2013年にカルソニックカンセイ(現マニエッティ・マレリ)社長などを経験した呉文精を副社長としてスカウトするも15年に退社。14年に副会長兼最高技術責任者(CTO)になったシャープ元社長の片山幹雄氏もその後退いた。

   15年には日産自動車タイ現地法人社長だった吉本浩之を副社長として招き、18年6月に創業以来初となる社長職をバトンタッチされたが、20年4月に退任。そして吉本に代わって社長に就き、初めてCEOを引き継いだ関氏も1年足らずでCEOを返上するかたちになった。

   今後の後継レースは、永守氏にスカウトされた数人の名が、早くも取り沙汰されている。21日のCEO復帰会見でも永守氏は「いつまでも私がやっている会社ではない。私がいなくてもしっかり問題を処理してくれる体制づくりが大切だ」と述べている。

   具体的候補と目されるのは、最高管理統括責任者(CFMO)に就く吉田真也常務執行役員(元三菱商事代表取締役)、最高財務責任者(CFO)に就く佐村彰宣氏(三菱重工業出身)のほか、岸田光哉氏常務執行役員(ソニーモバイルコミュニケーションズ元社長)、車載事業本部の副本部長を務める大村隆司氏(ルネサスエレクトロニクス出身)、そして社長兼COOとなる関氏もいる。

   関氏については、永守氏が「1年でCEOを渡したのはちょっと早すぎた。あと3年ぐらい経てばもう1回、CEOをやってもらえるんじゃないか」と、CEO復帰に含みを残す発言をしており、今でも後継者の最有力候補と見る向きが多いが、それも、車載事業をどれだけ伸ばせるか、実績次第ということだろう。

創業者の復帰は少なくないが、世代交代は最大の経営課題

   日本電産のように、一度は社長職を後進に譲りながら復帰した創業者はファーストリテイリングの柳井正氏、ソフトバンクグループの孫正義氏、エイチ・アイ・エスの澤田秀雄氏、ワタミの渡邉美樹氏など、少なくない。キヤノン創業家出身の御手洗冨士夫氏も、20年に3度目となる社長にカンバックしている(会長兼務)。

   とくに、新型コロナウイルス禍からの立ち直り途上にウクライナへのロシアの侵略が始まり、世界経済が視界不良に陥った今、創業者の再登板で組織を引き締めようという狙いは理解できる。

   ただ、元気とはいえ、永守氏も77歳で、世代交代をどう進めるのかは最大の経営課題。カリスマの後継者選びの難しさが並大抵ではないことをあらためて示したが、残された時間はそう長くないかもしれない。(ジャーナリスト 済田経夫)

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