妥協策として導き出された「ミニ」補正予算
だが、慌てたのは自民党だ。今国会で補正予算を成立させようとすれば、予算委員会などでの審議が必要になる。当然、野党が政府案を上回る規模の対案を出し、政府案は不十分と批判するのは確実で、与党批判の舞台をわざわざ野党に与えることにもなる。参院選に向け、敵に塩を送る行為に等しいというわけだ。
春先に補正予算を組んだケースは過去にもあるが、その直後の国政選挙で自民党は手痛い敗北を喫している。参院選の出馬予定者を中心に「補正反対」論が巻き起こり、自民党幹部は板挟みの状況に追い込まれた。
約1か月にわたり自公協議を続けた結果、妥協策として導き出されたのが「ミニ」補正予算という前代未聞の一手だ。
今国会中の補正予算の編成で公明党の顔を立てる一方で、中身は予備費の積み増しなど最小限にとどめれば国会での審議時間は最小限で済むうえ、公明党は「今国会での補正成立」という「戦果」を手にできる。連立を維持するための苦肉の策といっていい。
だが、こうした内情はメディアによって詳しく報じられ、野党に「財源の私物化だ」と政権の攻撃材料を与える皮肉な結果となった。
自公間に残したシコリも大きい。ある自民党関係者は「もし参院選で与党の票が伸びない事態になれば、責任の押し付け合いになる。連立に亀裂が入る可能性も否定できない」と声をひそめる。
「ミニ」補正予算が映し出すのは、選挙目当てで結びついた自公連立政権の「限界」かもしれない。(ジャーナリスト 白井俊郎)