トヨタ自動車が運営するトヨタ博物館(愛知県長久手市)がゴールデン・ウィークに合わせ、2022年4月29日から企画展「Here's a Small World! 小さなクルマの、大きな言い分」を始める。
子会社に軽自動車のトップメーカー、ダイハツ工業があるものの、自社では軽を開発しないトヨタが「小さなクルマ」を取り上げるのは、なぜなのだろう。
高度成長を支えた名車に、バブル期の申し子軽スポーツカーなど展示
同展は日本の軽自動車を中心に、1950年代から現代までの個性豊かな小型車15台と、約60台のミニチュアカーを展示する。その内容は興味深い。
15台の展示車は、年代順に、(1)オースチン・ヒーレー・スプライト(1958年)、(2)マツダR360クーペ(1961年)、(3)ダイハツミゼット(1963年)、(4)フィアット500(1963年)、(5)スズキ・スズライトキャリイバン(1964年)、(6)スバル360(1965年)、(7)ホンダT360H(1965年)、(8)バモスホンダ(1973年)、(9)スズキアルト(1979年)、(10)日産Be-1(1987年)、(11)トヨタRAV-FOUR(1989年)、(12)ホンダビート(1991年)、(13)スズキカプチーノ(1995年)、(14)トヨタWiLL Vi(2000年)、(15)トヨタC+pod(2021年)。
この15台の人選ならぬ「車選」には納得いく名車もあれば、クルマ好きなら納得いかない「駄作」のクルマもあるだろう。
トヨタは「本展は国産車を中心に1950年代から現代までの個性豊かな小さなクルマたちの大きな存在意義を紹介し、これからのモビリティ発展の可能性を考えるうえでのヒントとしていただきたく企画しました」という。
その意味で、マツダR360クーペ、ダイハツミゼット、スバル360の3台は日本の戦後復興と高度成長を支えた名車だ。79年発売のスズキアルトは、その後、人気が低迷していた軽自動車復活の起爆剤となった。
当時、アルトに対抗してダイハツミラなどのライバルが多数誕生し、「ボンネットバン(ボンバン)」と呼ばれた。ボンバンは、分類上は税金の安い4ナンバーの商用車だが、実際は4人乗りの乗用車として使われる2ボックスの軽のことで、税法の盲点をついたスズキアルトのアイデアはユーザーの支持を受けた。
ホンダビートとスズキカプチーノはバブル期の日本で生まれた軽スポーツの双璧で、今なおファンが多い。両車を超える軽スポーツは、ホンダS660なき後、もはや現れることはないだろう。現行のダイハツコペンはFF(フロントエンジン・フロントドライブ)で、MR(ミッドシップ・リヤドライブ)のビートや、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)のカプチーノとは本気度、希少性が異なる。
クルマ好きなら、そんな思いを胸にトヨタ博物館を訪れるのは一興だろう。GW期間(4月29日~5月8日)も毎日開館する。同展は7月18日まで。