ガソリン補助金は出口戦略が難しく、長期化の恐れが
また、「今回の緊急経済対策では少ない経済効果しか見込めない」とする試算を発表したのは野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏のリポート「緊急経済対策の経済効果試算:GDP押し上げ効果は0.4兆円、GDP比0.06%」(4月26付)では、低所得向け子ども給付金などの一時的な所得増は、消費に回るのが25%程度なので、1年間の名目GDP(国内総生産)をプラス0.04%押し上げる効果しかない、と指摘する。
また、補助金の対象となるガソリン(及び灯油)が家計の消費に占める比率は、エネルギー関連支出全体の29%と3分の1にも満たない。そのため、GDPをプラス0.02%押し上げる効果しかない。両方合わせて、GDPをプラス0.02%押し上げる効果があるだけだ。木内氏は、
「これでは、有効な燃料費高騰、物価高騰への対策とは言えないのだろう」
として、今回の緊急経済対策には多くの問題点、疑問点があると列挙した。整理してまとめるとこうだ。
(1)そもそも緊急経済対策が必要なほど景気は悪化していない。物価上昇はウクライナ問題以前からあり、ウクライナ問題を理由に緊急経済対策を実施する必然性は乏しい。
(2)物価高によって高まる家計の負担のうち、ガソリン補助金制度はそのごく一部にしか働きかけない。
(3)ガソリン補助金は価格メカニズムを歪め、脱炭素の流れに逆行する。また、出口戦略が難しく、原油高円安の傾向が修正されない限り、長期化し財政負担が膨らむ。
(4)低所得者世帯の子ども給付金支給は物価高騰とは直接関係がない。物価高騰などのショック下でも低所得者の生活が支えられるよう、社会保障制度を見直すことが優先ではないか。
(5)補正予算で5.5兆円という巨額予備費の水準が維持された。巨額予備費には、国会、国民の目が行き届かない形での支出に用いられる問題がある。
(福田和郎)