歴史・経済・文学で読み解くウクライナ戦争
「週刊エコノミスト」(2022年5月3日・10日号)の特集は、「ウクライナ戦争で知る 歴史・経済・文学」。
巻頭レポートは、2月24日のロシアのウクライナ侵攻から間もない28日に、ロシア軍の敗北を予想したツイートが軍事関係者の間で話題になったことを紹介している。
ツイートの主は、ロシア人の軍事研究家カミル・ガレエフ氏。米シンクタンク、ウィルソン・センターの研究員だ。プーチン大統領はショイグ国防相の前任のセルジュコフ国防相に、ロシア軍の改革を進めさせた。
セルジュコフ氏は陸軍を強化させるため、海軍をリストラしようとして、たくさんの政敵を作り、2012年に失脚。後任で少数民族出身のショイグ氏は政治的な遊泳術にのみ長けた人物であり、陸軍の強化は停滞してしまったという。
一方、14年のクリミア半島併合でロシアに敗北を期したウクライナ軍は、水面下で軍備の強化を進めてきた。しかも、ドンバス地方の戦闘で40万人以上の実戦経験のある退役軍人がいた。これに対し、ほとんどのロシア兵には実戦経験がないことに触れている。
その後、3月29日には「ロシアの支配層は神経質になっている。すべての決定を取り消し、2月23日以前に戻りたいと思っている」とツイート。ガレエフ氏のツイートも情報戦の一つかもしれないが、気になる情報だ。
ほかに、丸紅経済研究所所長代理の榎本裕洋氏の「ロシア産の威力」と題したレポートにも注目した。1次産品で高い世界シェアを持ち、新興国の需要があるため、ロシアの非友好国が貿易をやめても決定的な打撃にならない可能性があるというのだ。ロシアの輸出入の半分は残ると予想される。
ロシアを経済的にさらに追い詰める方法に2次制裁がある。米国を例に挙げると、米国が2次制裁を発動した場合、米国民だけでなくその他の国民もロシアの個人や団体と取引した場合、米国の経済制裁を受ける。
これを発動すれば、ロシアと新興国の貿易を止めることも可能だが、ニッケル・ニッケル製品や肥料、鉱物性燃料・鉱物油など、ロシアが輸出市場で高シェアを占める財を中心に世界は一層の物価上昇に見舞われる恐れがあるという。
(渡辺淳悦)