「駆け込み贈与」による節税メリットは?
「週刊ダイヤモンド」(2022年4月30日・5月7日号)は、連休中、実家の親と顔を合わせる機会も多いだろうと、「相続・生前贈与・住まい」の特集を組んでいる。
なぜ今、相続や生前贈与について親と話すことが大事なのか。生前贈与を禁じ手にするルール改正が、はやければ22年4月に行われる可能性もあったものの、継続審議となり、「駆け込み贈与」で節税できるチャンスが増えたからだ。
贈与税の非課税枠110万円の範囲で毎年生前贈与する節税術は有名だ。しかし、資産を多く持ち、相続税率が高い人は、たとえ110万円を超える贈与をして贈与税を払ったとしても、贈与額によっては相続税が減る効果の方が大きく、節税できる場合がある。たとえば、資産3億円なら「駆け込み贈与」2回でも936万円の節税になるという。
継続審議になったものの、近いうちに贈与税と相続税は一体化されるだろう、と多くの関係者は見ている。改正後のルールがどうなるかのヒントは、20年度の政府税制調査会の資料に隠れているというのだ。
日本と各国の制度がまとめられており、どこかの国の制度に準拠して改正後のルールが作られる可能性が高いという。現行の日本の制度と欧米諸国の制度の最大の違いは、相続発生前に贈与した財産を、相続財産とどう合算するかだ。日本の場合、相続前3年間に贈与された財産が、相続財産に合算される。
裏を返せば、駆け込み贈与による節税メリットを享受するためには、贈与した人が少なくとも3年間は生きている必要がある。
各国説の中で有力なのが、ドイツ説。その結論としては、「早めの贈与は有利」「制度改正直前の『駆け込み贈与』も有利」「改正後の贈与は長生きすると得になる」というものだ。
もしも税制改正が23年4月に実施される場合、23年1~3月がラストチャンスとなり、22年にも贈与していれば計2回分の恩恵が受けられる。親と相談したうえで、入念な準備と計画が必要だ、としている。
最大1000万円を非課税で贈与することが可能な、住宅資金贈与の特例による相続税の節税効果は大きい。この利用者は多いため、しばらく残る可能性が大きいという。一方、教育資金贈与は相続税対策として使われ過ぎているという批判があるため、存続は五分五分と見ている。人気があまりない結婚・子育て資金贈与は、廃止される可能性が高いという。
そのほか、相続争いは「普通の家庭」が一番危ないといい、相続対策本「ぶっちゃけ相続」の著者で税理士の橘慶太氏が相続の4つの基本について、誌上講義している。遺言書の有無、法定相続分、遺留分、相続税の4つだ。介護の苦労はほとんど認められない、生前贈与でバトル勃発など、7つの主なトラブルについても解説している。