牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショーホールディングス(HD)の株価が2022年4月20日に一時、前日終値比71円(2.4%)高の3010円と節目の3000円を超えて上昇し、2021年4月以来、約1年ぶりの高値をつけた。その後はやや下落しているが、株式市場全体も下げており、すき家の集客力への期待はおおむね持続しているとみられる。
2021年末、6年8か月ぶりの値上げ
足元で有力な材料が出たわけではないが、2021年12月に実施したすき家の牛丼の値上げが浸透し、売上が伸び続けていることが好感され、断続的に買いが入っているようだ。
値上げしても売上が落ちていないことでは吉野家HDも同じだが、同社役員の不適切な発言から、即刻解任されたことで吉野家の顧客の一部がすき家に回るとの連想も働いているようだ。
すき家の値上げは21年12月23日から。主力の「並盛」は50円値上がり400円(税込み、以下同)、「ミニ」は40円上がって330円、「大盛」は70円上がって550円、「メガ」は70円上がって850円などとなった。値上げは2015年4月以来、6年8か月ぶりだった。
当時ゼンショーHDは「米国産牛肉をはじめとする食材費に加え、配送費、包材費などの上昇が続いている」と説明していた。吉野家は21年10月、松屋も同9月に牛丼の値上げに踏み切っており、すき家も我慢できなくなったかたちだった。
値上げ後は売上、客数ともに前年増
ただ、値上げによって消費者がすき家の牛丼を敬遠することはなかった。
すき家の月次の既存店売上高は22年1月が前年同月比10.9%増、2月が11.4%増。そして、4月1日に発表した3月も11.4%増と、値上げ後に3か月続けて1割程度増え続けている。客数も1月が3.3%増、2月が3.3%増、3月が2.7%増と伸びていることから、消費者が値上げを受け入れ、定着している様子がうかがえる。
これに関連して、吉野家の既存店売上高も3月は11.9%増。大手2社に比べ苦戦している松屋も3月の既存店売上高は1.8%増と2か月ぶりにプラスに転じた。
かつて大手牛丼チェーンが値下げを競った時期より値段は高くなっているものの、ワンコインで並盛を食べられるというのは、外食産業の中ではまだまだ安いというところで、顧客離れを免れているのだろう。今後の業績次第ではさらに上値を追う可能性もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)