社内に眠れる「宝の山」顧客情報、すぐ分類を! メールで顧客との「接点拡大」どうしたら狙えるか?セオリーは?〈その3〉(大関暁夫)

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   前々回の〈その1〉前回の〈その2〉を通じて、「掘り起こしオンライン営業」の取っ掛かりの方法として、顧客リストの作成・整理について説明してきました。自社の顧客リストが完成したら、次に必要なのが、記載されている顧客の分類です。

   具体的には、(1)現在取引がある先(過去1年以内に取引実績があった先)、(2)現在は取引や営業担当の行き来がないが過去に取引があった先、(3)取引実績はないが名刺交換等で過去に営業担当者とやり取りがあった先、の3分類を進めましょう。

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分類後、フィールドセールス、インサイドセールス担当者に管理を割り振る

   これを済ませたら、まず、「現在取引がある先(あるいは、現在営業担当者が決まっている先。以下、『管理先』とします)」は、担当者を明確に決めてしっかり管理をします。あわせてこの機会に、現在の「管理先」の管理方法が適切であるか否かをしっかり見極める必要があります。

   管理の目安になるのは、年間利益貢献度という考え方です。これは、赤字先を除いた積み上げの利益額で全社総額の80%に達するまでを「A管理先」とします。さらに、95%に達するまでを「B管理先」とし、それ以外を「C管理先」とする、ABC管理と呼ばれる方法です(基準を利益額ではなく売上額で見る方法もありますが、今の時代は利益での管理が一般的です)。

   A管理先、B管理先は、基本的に営業担当者を決めて、フィールドセールス部隊が管理します。C管理先は、中身によってインサイドセールス部隊管理とするか、フィールドセールス部隊管理とするかで、C1先とC2先に分かれます(そのあたりを含めたABC管理の具体的な管理方法は、別項で説明したいと思います)。

   この流れで、「現在は取引や営業担当の行き来がないが過去に取引があった先」がD管理先、「取引実績はないが名刺交換等で過去に営業担当者とやり取りがあった先」はE管理先となります。

まずは相手が欲しがる情報、喜ぶ情報の提供を心掛ける

   D管理先およびE管理先は、インサイドセールス部隊が担当します。

   インサイドセールス部隊は、メールでの接点拡大を基本戦略とするのが一般的。そして、担当する段階で必須情報となるのが、顧客リスト作成の際にヒアリング項目に挙げた交渉相手の担当者名とメールアドレスになります。D管理先、E管理先に関しては、まずは相手先のメールアドレスの入手に注力してください(〈その1〉〈その2〉も参考のこと)。

   さて、インサイドセールス部隊の担当となるのが、上記のC、D、E管理先です。取引実績があったかなかったか、あるいは、いつあったかについてはバラつきがあっても、少なくとも相手の担当者が自社の名前を知っている。または、名前を聞いたことがある可能性は高いわけで、担当者宛に情報メールを送った場合、全く取引実績がない先に比べて、読んでもらえる可能性は高いといえます。ならば、メールで接点拡大を狙わない手はないわけで、彼らをインサイドセールスのメインターゲットとし、情報メールの定期送付を企画するのがセオリーです。

   では、どのようなメールを送るのがいいのでしょうか。

   この段階で売りたい気持ちがはやって、自社の製品やサービスの売り込みや、押し付けがましい商品紹介のメールを送ったのでは、何の意味もありません。自社と大きな取引がない、あるいは、前回の取引から間が空いている相手に対して、強引な売り込みをかけるなら相手はひいてしまうもの。今後、こちらからのメールを2度と開けてもらえないかもしれません。場合によっては、「今後メールを送らないで欲しい」と、自社からのメール拒絶の意思表明をされてしまうかもしれません。

   情報メールの基本は、相手が欲しがっていると思しき情報、あるいは、相手が喜ぶであろう情報、タダで受け取ってお得感のある情報です。具体的には、相手にとって何がしかの役に立つような自社サイドの業界情報。または、どの会社の担当者も読みたいと思うであろう自社の製品やサービスを活用したコスト削減のヒントや、自社製品やサービスを使って収益に貢献したような他社の具体的事例など、です。

   この手の情報は、営業部門内の各担当者が持っているかもしれませんし、技術部門がお客様の役に立つ情報を握っているかもしれません。過去の情報でも、相手にとって未知の情報であれば、それは有益です。したがって、営業部門は常に社内でのコミュニケーションを密にして、情報のアンテナを立てる必要があるのです。営業担当は社外的にはもちろん、社内でも良きコミュニケーターであるべし、との意識をもって日々の活動をすることが大切です。

頻繁なメールはかえって悪印象、そうならないように...

   C管理先に対する情報メールの発信頻度ですが、あまり頻繁なメールはかえって印象を悪くします。相手に自社の存在忘れられることがなく、かつ、うるさがられない程度と考えると、多くとも月に1本が限度でしょう。中身は、工夫を凝らしたお役立ち情報や、自社業界に関わらない一般的な情報でも「初耳」と思わせるものがベターです。

   何回かに1回は、新製品情報等少しだけセールス色のある情報を織り交ぜることも可能です。この場合もあくまで相手目線で情報を伝えます。すなわち、「こんなにすばらしい製品です」ではなく、「こんな感じでお役に立てる製品です」というトーンで伝えることがポイントです。

   現在のIT技術では、相手に送付されたメールが開封されたか否か、あるいはメール内のリンクをクリックして自社のホームページにいたか否か、あるいはどのぐらいの回数および時間自社サイトに滞在していたか、等々を調べることが可能になっています。

   これは、インサイドセールスチームが専門的な勉強をすれば、自社でもできなくはないことです。が、最初は専門家の力を借りて、レスポンス調査の仕組みを構築し、安定運用した後に自走に切り替えるのがベターかと思います。

   このあたりの詳細は、本連載の共同執筆者である藤崎健一社長のディーキューブ株式会社にご相談いただくと、分かりやすくご対応いただけると思います。

★ディーキューブ株式会社
ディーキューブ株式会社|デジタルを活用した法人営業のしくみ化のエキスパート (dcube.jp)

(大関暁夫)

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大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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