違反事案の割合が高いのは楽天モバイル
もう1つ公開されたのは「電気通信事業法第27条の3の規律遵守状況に係る覆面調査」だ。これは、タイトルにある条項に対する違反行為摘発のために、総務省のホームページに情報提供窓口を開設、利用者からの情報を集めた。
携帯電話業界の公正な競争を促進するために2019年に改正された項目だ。ざっくりいうと、(1)通信料金と端末代金の完全な分離、(2)行き過ぎた「囲い込み」の禁止、という2つの競争ルールを業界に求めている。
提供された情報531件のうち、電気通信事業法で2万円と定められた値引き額の上限を超えたり、回線を契約しない客に端末の販売を拒否したりするなど、違反事案が40件、違反が疑われる事案が12件あった。これらをあわせると、調査全体の9.8%にのぼる。昨年調査では、違反・違反疑いの事案は20.5%だったから、半減したことになる。「覆面調査」の効果がでてきたということか。
違反事案の割合が最も高い事業者は楽天モバイルで、23.3%だった。次いで、ソフトバンク8.4%、KDDI(au)7.8%、NTTドコモ3.6%という結果になった。事業者別に主な違反ケースをみると――。
【楽天モバイル】
・SIMと一緒に契約していただかないと端末の購入ができない。端末自体の購入は不可。端末購入プログラムも契約がないと不可。=非回線契約者への端末販売拒否。
・(端末購入プログラムについて)楽天カードを持っており、かつ端末がiPhoneであれば、楽天カードで48回払いをしてもらうと適用できるが、回線契約を伴う。=非回線契約者への端末購入サポートプログラムの提供拒否。
・ポイントバックは、回線契約を伴わないと適用できない。iPhoneSEについて、回線契約がないと色々なキャンペーンが適用できない。回線契約をした場合、本体価格4万4800円のところ、iPhoneSEのキャンペーンで4万4799ポイント、また、楽天モバイルを初めて契約で5000ポイント、併せて4万9799ポイントになる。=回線契約を条件とする2万円の上限を超える利益提供の提示。
【ソフトバンク】
・乗り換えとかなら受付ができるが、端末だけだと、それ専用の端末の納期が未定となってしまっていて、いつ入って来るかわからない状態になってしまっている。今ある端末はソフトバンクから出ている機種になってしまうので、端末だけの購入ができない。=非回線契約者への端末販売拒否。
・ソフトバンクユーザー以外は48回払いで24回支払った後に端末を返しても分割が続く。残債免除はソフトバンクユーザーだけである。回線契約をすれば、本体を返せば残債免除になる。ソフトバンクユーザーの人向けに残債免除というプランがあるだけ。=非回線契約者への端末購入サポートプログラムの提供拒否。
・iPhoneSEの場合、回線がない状態で単体のみ購入になる場合だと、すべてのキャンペーンが外れてしまうので、5万7600円の定価での購入になる。回線込みで買った場合、乗り換えで番号をソフトバンクに持ってくると1円で購入できる。=回線契約を条件とする2万円の上限を超える利益提供の提示。
【KDDI(au)】
・端末だけの販売は基本的にはしていない。au又はUQへの乗り換えだったら端末を販売している。今から案内するiPhoneのキャンペーンはauがやっているものであり、割引額は下がるがUQでも適用される。ただ、端末だけという話なのであれば他の契約してくれるお客様にお渡ししている。=非回線契約者への端末販売拒否。
・端サポは回線契約がないと組むことが出来ない。(カタログに回線契約がなくてもよいと書いてある旨を伝えたところ)これは返却時の話。「機種返却時には、回線契約がなくてもよい」という旨の表示。=非回線契約者への端末購入サポートプログラムの提供拒否。
・iPhoneSEについて、2、3月は繁忙期なので、auに一度乗り換えてもらえれば9800円でお渡しできる。乗り換えではないと、単純に「5万5000円の代金をお支払いくださいね」という話になる。機種だけだとキャンペーンは適用されない。=回線契約を条件とする2万円の上限を超える利益提供の提示。
【NTTドコモ】
・(在庫があることを確認したiPhoneSEについて)乗り換え用で予約されている端末だった。取り置きの方より先に来られたので、乗り換えであればお譲りできるが、それ以外の人にはお譲りできない。=非回線契約者への端末販売拒否。
・端末購入プログラムは、純粋新規でも乗り換えでも使えるが、端末単体購入であれば使うことができない。単体購入は一括払いのみになる。=非回線契約者への端末購入サポートプログラムの提供拒否。
・iPhone13miniについて、乗り換えであれば、2万2000円の割引に加え、頭金1万4300円を免除させていただく。上の者と今相談し、ここまではできるという話になった。=回線契約を上限とする2万円の上限を超える利益提供の提示。
などと、それぞれ携帯電話ショップの店員は、さまざまな「言い訳」を用意するものだ。