トレーナー任せはダメ...自分に合った方法を自分の意思で
国民生活センターでは、専門家のコメントとして、帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科健康スポーツコースの佐藤真治教授の話を紹介している。
「運動の大切さと運動の身体的影響は別物です。中でも、筋力トレーニングなどの運動を安全に効果的に行うためには、適切な運動強度で行うことが大切です。例えば、健康増進や体力増強のために運動をする場合、運動強度が低いと期待する効果が得られないこともある一方、過度な運動強度により身体を壊してしまうこともあります。
パーソナルトレーナーとは、単にマンツーマンのトレーニングを指導する人ではなく、『あなたに合った運動のやり方の選択肢を示して、伴走してくれる人』であり、最終的にはご自身に合った方法を自分の意思で選択していくことが重要です」
つまり、全面的にパーソナルトレーナー任せにせず、あくまで自己責任でトレーニングをすることが大切というわけだ。
そこで国民生活センターでは、ちょっと専門的になるが、スポーツ医学から見た「トレーニングの落とし穴」を解説している。「安全限界と有効限界」の境目のことだ。「これ以上の運動は危険である」という運動強度や運動量の限界を「安全限界」といい、「これ以下の運動強度や運動量では効果が得られない」という限界を「有効限界」というのだ=図表3参照。
安全限界も有効限界もその人の健康状態や体力によって異なる。運動を安全に、かつ、効果的に行うためには、図表3の斜線で示した2つの限界ラインの中間である「処方すべき領域」内の運動強度でトレーニングを行うことが大切だ。
パーソナルトレーナーは個々の依頼者にあった「処方すべき領域」で、適切な運動強度を見極めるスキルが求められる。しかし、高齢者や疾患を持つ人、運動不足の人は、「処方すべき領域」が非常に狭いため、見極めを誤ると事故を起こしやすくなる。
そのため、依頼者本人も自分のことをよく知り、パーソナルトレーナーに自分の「限界」を伝えることが大切なのだ。国民生活センターではこうアドバイスしている。
「事故を防ぐためには、事前にトレーナーからヒアリングを受け、現在の身体状況だけでなく、過去の既往やこれまでの運動経験などを共有し、必要であれば医師に確認を求めることが大切です。また、実際にマシン等を使った体力テスト(運動負荷テスト)を実施することも、適切な運動強度の設定に役立ちます」
「トレーニング中は、効果を追い求めるあまり安全限界を超える運動強度をかけるよう指導されていないかなど確認することが大切です。もちろん、無理な状況になったらすぐにトレーナーに伝えてください。自分のからだの調子やその日の微妙な変化を誰よりも良く知っているのはトレーニングするあなた自身です。無理をせず、時には自分の意思で中断する勇気を持ちましょう」
(福田和郎)