必ずやってくる定年...その時、あなたの人生の物語はどう続けたい?

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居酒屋、カルチャーセンター、図書館が居場所に

   定年後、働いている人ばかりが登場しているわけではない。ユニークな人をいろいろ紹介している。

   退職してから外出時には和服に雪駄、自宅から6駅先までの定期券を買い、毎日居酒屋へ「出勤」する男性(69)がいる。「野鳥の会」の会員でもあり、「野鳥は本当に時間がつぶれます」と喜々としている。

   カルチャーセンターは、女性の社交の場にもなっているが、男性も少なくない。「カルチャーに通って、人生が180度変わりました」という独身男性(67)は、講座で知り合った女性と、定年後に初恋をしたとのろけている。

   夫が家にいることで、妻が感じるストレスは大きくなるという。「そういう問題はない」と言い切る夫婦の場合、夫と妻は、日中、1階と2階で「別居」しているらしい。ほかに、海外への単身赴任が長かった夫の退職とともに、ある夫婦は、東京から宇都宮に引っ越した。

「引っ越して新しい場所でスタートすれば、お互いゼロですから、一緒にスタートできるじゃないですか」

と新しい土地でも生活を楽しんでいる。

   ときに、ドキっとするような1行がある。

「定年後の男性にとって、図書館は新たな勤務先のようである」

   たしかに、平日の図書館は彼らのオアシスかもしれない。時間つぶしができるうえに、居心地も悪くない。だが、時折、クレーマーと化した人を見かける。著者は「定年後の人がますます増えると、図書館は昔ながらの会社になってしまうのではないだろうか」と心配する。

   2025年には65歳定年が法律で義務化される。さらに、その先まで働くことを求める動きもあるようだ。「定年後」というゆるい時間を享受できるのは、今のうちかもしれない。

   本書には、この手の本にありがちな、こうしなければならない、という堅苦しさがまったくない。いろいろな定年のありようがあることを知り、気持ちが少し楽になるだろう。

(渡辺淳悦)

「定年入門 イキイキしなくちゃダメですか」
高橋秀実著
ポプラ社
1056円(税込)

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