「Z世代」の若者たちで日本の「昭和」がブームに
一方で、日本の「昭和」にハマる若者たちが増えてきたという。1995年頃から2010年頃に生まれた「Z世代」の若者たちの間で、中森明菜、松田聖子らのアイドルの音楽、ファッション、写真への関心が高まっているというのだ。日本の若者の間に広がった昭和ブームが、中国の若者にも影響を与えているという分析を紹介している。
大学入試でも外国語を英語ではなく、日本語で受験する高校生が急増。日本語選択者は2016年には1万人にも満たなかったが、2021年には約20万人を突破した。英語よりも比較的簡単に高得点が取れるなど実利のほか、日本語のアニメやドラマなどの影響があるのでは、と見ている。
しかしながら、彼らの日本製品への憧れは薄い、と指摘している。かつての中国人にとって、日本製品は「憧れの的」だったが、Z世代の若者は日本製品に対して、そうしたイメージは悲しいくらい持っていないという。
そうした若者たちの傾向をキャッチし、商品化に成功しているのが、中国の新興ブランドの経営者たちだという。多くが20~30代で、欧米への留学や旅行経験もあり、世界のトレンドを熟知している。
「日本製より中国製、デザインや品質も中国製のほうがずっといい」という若者の姿に、中島さんは日本企業の危機を感じている。
日本にとって残念な結論で終わるかと思ったら、そうではなかった。
エピローグでは2020年以降、上海に蔦屋書店、ロフトなど日本の店の進出が相次いでいることに触れている。日本関係の店は中間層以上の上海人の間で、「日常生活」の一部になっているという。中島さんは
「自由に往来できなくなったことで、中国の中の『日本』の存在感は熟成されているのではないかとすら感じる」
と書いている。
だとすれば、コロナが終息すれば、また中国からのインバウンドは復活するのではないか、そんな予感がした。
(渡辺淳悦)
「いま中国人は中国をこう見る」
中島恵著
日経BP
990円(税込)