何にモヤモヤし、何が許せないのか「心」を整理しよう
――そのとおりですね。川上さんなら、ズバリ投稿者にどうアドバイスをしますか。
川上さん「投稿者さんは、後輩の業務をカバーしなければならず大変だとお察しします。決して心が狭いわけではなく、負担を不満に思うのは当然の感情です。しかしながら、後輩を加害者だと見なすのは事実誤認だと思います。後輩は決して悪いことをしているわけではありません。ただ、『産休だけ取ってお金ももらって辞めるつもりだったらしい』とも聞いて、いい加減な気持ちで入社したと感じて憤りの感情がわきあがるのも無理はないと思います。
投稿者さんには、何にモヤモヤして、何が許せないのかを細かく分けて整理していただきたいと思います。後輩の妊娠に対する感情、後輩の配慮のなさや裏に隠された気持ち、その後の振る舞いなど、具体的に切り分けることで感情の矛先をどこに向けるべきかがハッキリと見えるようになると思います。
感情の矛先の焦点が合ってくれば、モヤモヤした感情も整えやすくなるはずです。今は何に心が乱されているのかが不明確で、混乱してしまっているように感じます。それはストレスを蓄積させる要因になりえます。少しでも感情を整理して、ストレスを軽減していただきたいと願います」
――後輩女性は、今後どのように働いていったらよいでしょうか。
川上さん「当然ながら妊娠は喜ばしいことです。産育休を取得するのも当然のことです。しかしながら、職場での振る舞いが上手くできているとは言えません。現に、投稿者さんは不満を募らせ、『産休だけ取ってお金ももらって辞めるつもりらしい』という話まで飛び交ってしまっています。
給与をもらって勤めている以上、戦力として職務には精一杯取り組む必要があります。また、産育休を取得して職場復帰した際にスムーズに仕事に戻れるよう、投稿者さんを含め周囲と良好な関係性を築いておくことは大切です。少なくとも、今の立ち居振る舞いは、周囲から少なからず反感を買ってしまっていることを自覚してあらためる必要があるように思います」
――今回の論争を通じて、とくに強調しておきたいことがありますか。
川上さん「投稿のようなトラブルは日本中で生じていると思われますが、従来の対象はそのほとんどが女性です。しかし、今年4月から男性の育休取得を促進する施策が段階的に始まりました。今後、同じようなトラブルは男女関係なく発生することになるはずです。これまでの『社員が休まないことを前提とした業務体制』が引き起こす弊害は、さらに大きくなり、会社に致命的なダメージを与えることにもなりかねません。
一刻も早く、『社員が休むことを前提とした業務体制』に切り替えたうえで、成果を最大化させる工夫改善に取り組む必要があります。それが、これからの会社が目指すべき進化です。言い換えると、旧態依然としたままの会社は、今回の投稿のようなトラブルが今後も繰り返し発生し続けることになるでしょう。一日でも早く、業務体制を再構築していただきたいと思います」
(福田和郎)