中途採用の新入社員女性が、入社後4か月で妊娠してしまった。「せっかく仕事を教えてきたのに...」と残念がる先輩女性の投稿が炎上気味だ。
先輩女性が後輩を祝福できない裏には、後輩女性の「態度」があった。面接では長く働きたいと言っていたのに、実のところは、産休育休を取った後、辞めるつもりだったらしいからだ。
「私は心が狭すぎでしょうか」との投稿に対して、「後輩こそ非常識」という声と、「妊娠=迷惑という意識では、女性の社会進出など無理」という批判で、賛否を呼んでいる。専門家の裁定は?
「びっくりしますよね」と妊娠報告
話題になっているのは、女性向けサイト「発言小町」(2022年4月13日付)に載った投稿だ。タイトルは「入社してすぐ妊娠って正直迷惑すぎる」。こんな書き出しで始まる。
「中途入社してまだ4か月しか経っていない30歳の後輩が妊娠しました。私は女性で、上司の立場ですが、内心正直なところモヤモヤします。面接した時は長く働きたいって言っていたから採用しましたが、実のところは妊娠したらしたで産休だけ取ってお金もらって辞めるつもりだったらしいことを人伝に聞きました。この4か月間、必死に教えてきましたが無駄だった気分です」
後輩女性の仕事ぶりはというと、どうやらミスが多いらしい。また、「産休が取りたいからギリギリまであと数か月働く」という。そのため、会社としてはすぐには人員を増やしてもらえない状況だ。
「こちらも気をつかうし、いつ体調悪くなるかもわからない」と、投稿者は不満を募らせる。何より違和感があったのは、後輩女性の「態度」だった。
「(妊娠を)報告をされた時も、入ったばかりなのに申し訳ない、などのきちんとした謝罪が一言もなく、嬉しそうに報告され(びっくりしますよね、すみませんとは言われました)、妊娠したからこうして欲しいなど要求ばかりで、社会人としてどうなのかなと思ってしまいました」
そして、「ある程度戦力になるまで頑張ってくれてからの報告とか(中略)、謝罪もあればまだ許せたのかもしれませんが、心が狭すぎでしょうか」と悩みを訴えるのだった。
この投稿には、賛否が寄せられている。まず、「あなたの心は狭くない」「後輩女性こそ大迷惑」と、投稿者に共感、同情する以下のような声が寄せられた。
「迷惑。妊娠出産に対して会社側がサポートしていく。それはわかります。まわりの他のスタッフももちろんサポートします。でも、やっぱり、タイミングとか後輩さんのように迷惑になってしまうこともあると思います」
「お気持ちよくわかります。狭くないですよ。こういうケースも迷惑に思っちゃいけないという意見もあると知っていますが、実際に起こると、その後は(採用するなら)お子さんがもう大きい女性のほうがいいのかなあ的な流れになりますね」
「心が狭いとは思いません。(中略)人を採用するにはお金もかかりますし、そういったことを顧みず、後足で砂をかけるように退社しようとしていると聞かされたら、私もガッカリすると思います。彼女の採用にはあなたも関わっているとのことなので、責任も感じていらっしゃることでしょう」
「仕事は仕事をして収入を得に来るところであって育休手当目当てに来るところじゃありませんから。仕事で貢献した人に対して与えられるべきものだと思っています。(中略)びっくりしたんじゃなくて、呆れてんだよ、と言いたいくらいです」
産休育休の連続...在職5年で働いたのは1年未満、の例
また、「気持ちはわかる」と、実例を挙げる人も多かった。
「こういうのは自分が被害に遭わないと理解してもらいにくいです。(中略)一緒に業務をしていた女性が大事なタイミングで産休育休に入り、2人で分ける業務を1人でする羽目になり、大変だった経験があるのでわかります」「あとは、大学院生の時に新しく入ってきた女性に実験の手ほどきが終わったとたんに予期せぬ妊娠、産休育休。戻ってきてからもフォローしましたが、『私のやりたかったことはこんなことではない』とまで言われて、嫌~な気持ちになったことがあります」
「うちも新入社員研修の最中に結婚、入社4か月で妊娠、1年半しっかり休んで復帰したと思ったら、すでに臨月ですぐに2度目の産休。次は2年育休取ってまさかの退職した子がいました。在職5年ほどで実際に働いたのは1年未満。ギリギリで育児休業給付金も貰えたので、もらうものを全部もらって消えていきました」
さらに、産休育休制度を利用するだけ利用して辞めていく場合は、ペナルティーを科してはどうか、という声もいくつか寄せられた。これが代表的な意見だ。
「やっぱり産休育休の権利だけというのはもうやめたほうがよいと思う。権利を得るなら義務も必ず負う必要があるのですが、大半の女性はしっかり義務も果たしている反面、逃げちゃっても特にペナルティーがないのは問題ですよね。(中略)よく言われている『育休後一定期間働かない場合は、育休の間に受け取った助成金を返納する』という決まりを作れば、ある程度の抑止力になるんじゃないかな」
「新入社員の産休育休、むしろ推奨」の例、その理由は...
一方で、こうした意見には真っ向から反対する、「妊娠=迷惑という意識では、女性の社会進出なんて無理」「投稿者は心が狭い」と、後輩女性にエールを送る意見も少なくなかった。
「入社した後はしばらく妊娠してはいけないという風潮がおかしいと思います。うちは新入社員の産休育休、むしろ推奨。早いうちに産み終えてその後ブランクなしに働いてもらったほうが、ある程度育ってから休まれるよりよっぽどメリットが多いです。だから、新卒で、半年で妊娠してもなんとも思われません。(中略)入社すぐの妊娠を否定することは女性の足を引っぱるだけと思います」
「じゃあ、(妊娠が)いつなら迷惑と感じないのでしょうか。仕事を覚えて責任が持てる仕事をもったタイミングですか? 妊娠=迷惑という感覚を受け入れてしまうと、もう女性の社会進出なんて不可能ですね」
また、結果的に投稿者を追い詰めることになった会社の人事体制そのものを問題視する意見も寄せられた。
「私の会社では、後輩の指導にあたる人には少しですが手当が出ますし、そのための経費もつきます。なので、『必死に教えたのに無駄だった』とは思いません。(中略)それに、産休育休中の業務を代わった人にも手当が出ます。あるいは、休業中の代替社員を雇います。また、出産が決まったら担当していた業務の棚卸をして引き継ぎがスムーズにいくように会社全体としてフォローしますので、『産休が迷惑』みたいなこともありません」
「心が狭い、狭くない、ではないですね。制度として利用するのだから問題ないですし、会社も認めている。会社は社員を雇って利益を出すのに利用している。国は子育て支援を推奨している。(中略)1人休んだくらいで業務に支障が出るような体制を取っている会社が悪いのです。(中略)人のせいにしていては成長しませんよ。なぜこうなっているのか。どうしたらよいのか。ここから考えてみましょう」
「新しい命」を素直に祝福できない残念な事例
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、今回の後輩の妊娠に関する投稿をめぐる論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに意見を求めた。
――今回の投稿と、回答者たちの意見を読んで、率直にどのような感想を持ちましたか?
川上敬太郎さん「さまざまな感情がからみあって、新しい命が宿ったことを素直に祝福できないという、残念な事例だと思います。後輩が妊娠したことで、業務上そのしわ寄せをかぶってしまう投稿者さんは大変です。落胆や怒りなどの感情が投稿の端々から感じ取れます。
ただ、投稿者さんが被害者で、後輩が加害者と見なしてしまうと、妊娠したことが悪いことのようになってしまいます。そんな図式になってしまうことには、社会のあり方として違和感を覚えます」
このあとも、川上さんのアドバイスは白熱します――。<「入社してすぐ妊娠って、どうなの?!」 仕事教えていた先輩女性の投稿に賛否...心狭いのはどっち?会社の体制の問題?専門家に聞いた(2)>に続きます。
(福田和郎)