「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。
今回の「CASE 1」では、「指示待ち部下」を自ら行動させるにはどうしたらいいか、考えていきましょう。
部下の主体性と自主性を尊重すべきなのか?
【上司(課長)】A君、さっきから一体何をボーっとしてるんだ? 体調でも悪いのか?
【部下(A君)】あっ、いえ。今日が期日の指示された仕事が終わってしまったものですから...。
【上司】それで、何もせずにいたのか? それなら、次の仕事に早めに着手したらいいだろう。
【部下】しかし、急いで仕事を進めてしまうと、また時間が余ってしまいますので。
【上司】時間に余裕ができたら、さらに成果が上がるように創意工夫しながら進めたらどうだ。
【部下】はぁ...。しかし、自分ではよく判断できませんから、不在の先輩が戻ったら指示を伺います。
【上司】えっ? 指示がないと、仕事一つ自分で進められないのか?...
少々ディフォルメしたケースですが、職場には少なからずこのような「指示待ち部下」がいるものです。入社して間もない新入社員にもありがちな光景ですね。あなたが上司なら、こうした部下にどのように仕事を与え、育てますか?
上司の対応としては、「この仕事は君に任せるから、まず自分でどこまでできるか、やってみてほしい。わからないことは、その都度質問するように」と指示を出すことが考えられます。部下の主体性と自主性を引き出そうという意図じたいは、悪いものではありません。
しかし、上司からすれば「これくらいはできるだろう」と思うような仕事でも、キャリアの浅い部下や「指示待ち」が身についてしまった部下にとっては、どこからどう手をつけていいか、わからない場合も少なくありません。こうした部下に「まずやってみて」と仕事を全て委任し、責任を持たせようとするのは酷なことなのです。
また、相手の質問に何でも答えていると、部下は「聞けば教えてくれるんだ」「いつも教えに従えばいいんだ」と刷り込まれていき、自分の頭で考えようとしなくなります。その結果、上司はいつまでたっても仕事を任せることができなくなってしまうのです。