「円安」で喜ぶ投機筋の思惑とは
ところで、急激に円安が進んだことで、「物価高」を懸念する声が高まっているのに、「日本株」(日経平均やTOPIX)がやや上昇傾向にあるのは、どういうわけか。
第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏は、リポート「1.日本株には『良い円安』 2.投機筋は安心して円売り」(4月20日付)のなかで、その疑問に対してこう説明している。
「(円安が良いか悪いかについては)消費者目線では体感物価の上昇を通じたマインド悪化が顕著になっており、個人消費への影響が懸念される。もっとも、大企業製造業が多く含まれる日本株(日経平均やTOPIX)にとってはプラスの影響が大きいと判断される」
円安は輸出産業に有利に働くからだが、そこには産業構造と株式市場のアンバランスがある。
「GDP(国内総生産)に占める製造業のウエイトは約2割に過ぎない一方、日本株においてそのウエイトは約6割(日経平均採用銘柄数のうち6割強、TOPIXは時価総額ベース6割強)と大きな差があることを踏まえれば、マクロ的には『微妙』であっても、日本株にはプラスの可能性が高いと判断される。株価指数が(大企業)製造業偏重であることを改めて認識する必要があるだろう」
藤代氏も、今後も円安が加速するとみる。要因の第一は米国の金利の急上昇(=図表1参照)だが、日銀の政策姿勢によって投機筋の「円売り」に拍車がかかるという点では、木内氏と同じ見方だ。
「黒田東彦総裁は『円安は日本経済にとってプラス』との基本見解は崩しておらず、そうした認識の下で日米金利差拡大を促すYCC(イールドカーブ・コントロール)を継続する構えを示しており、日銀は指値オペを駆使して10年金利を0.25%以下の水準に抑える公算が大きい。投機筋は日銀の円安牽制に怯えることなく、ポジションを膨らますことができる」