ミシュラン三つ星料理人が語る「日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか」

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   ミシュランガイドで三つ星を獲得した和食の料理人が、その素材や調理法の秘訣を明かしたのが、本書「日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか」(ポプラ社)である。繊細な日本料理を海外で提供する舞台裏にも触れており、ビジネスに携わる人にも参考になるだろう。

「日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか」(奥田透著)ポプラ社

   著者の奥田透さんは、1969年静岡県生まれ。京都や徳島の名店で修業の後、29歳で静岡に「春夏秋冬花見小路」をオープン。2003年に東京・銀座に「銀座小十」をオープン、2007年に「ミシュランガイド東京」で三つ星を獲得。13年にはパリ、17年にはニューヨークにも店を出した。著書に「本当においしく作れる和食」「世界でいちばん小さな三つ星料理店」などがある。

   ミシュランの星付き店の数は、東京が203、パリ109、京都108、大阪96、ニューヨーク67と東京が世界一である。奥田さん個人としても、日本が世界一の美食の国だと思っていて、なかでも東京は際立っているという。

   日本食はもとより、世界各国の料理がハイレベルで提供され、高級店からワンコインの店まですばらしいクオリティを保っているのもすごいところだ、と評価している。

  • 世界から絶賛される日本料理に迫る一冊だ(写真はイメージ)
    世界から絶賛される日本料理に迫る一冊だ(写真はイメージ)
  • 世界から絶賛される日本料理に迫る一冊だ(写真はイメージ)

日本料理の基本は「切る」 切り方によって味が変わる

   本書は、ミシュランが証明した日本料理のすばらしさを、素材や調理法などから奥田さんが解説したものだ。日本料理の最大の魅力は、栄養面とバランスのよさから世界一の健康食であることだと考えている。

   日本料理はそもそも油をほとんど使わないから、身体への負担が少ない。四季折々、その時の人間の身体に必要な食材――たとえば、身体を温めたり冷やしたりする食材がバラエティ豊かにそろっているため、身体への負担が少なく、健康を維持するのに適している。和食の存在そのものがSDGsの項目をいくつも体現しているというのだ。

   奥田さんは、「日本料理にメインディッシュはない」と考えている。付き出しに始まり、10品ほどの料理をつないでいくのが、日本料理だと思っている。だから、毎月の献立を考えることが最も大事な仕事だという。

   また、日本料理が日本料理であるために、ただおいしいだけではダメで、毎月毎月の行事や節句、その季節に合った器選び、部屋の掛け軸、花入れや箸置き、お膳など、トータルコーディネートで考えなければならないそうだ。

   お昼は料理だけで2万5000円、夜も3万3000円という高額な料金設定に求められているのは、お客の想像を超えた料理。それだけに、料理のことだけを考える毎日だという。

   切る、焼く、串を打つ、揚げる、煮る・蒸す、和える、盛り付けるという「調理法」から日本料理について考察している。基本は「切る」ことだという。切り方によって味が変わるからだ。日本料理に使うのは、片刃包丁で鋼製だ。慣れないとうまく使えず、一番難しいのは、刺身だという。その難しさをこう表現している。

「いい材料、切れる包丁、切る技術、全て揃わないと、おいしい刺身は作れません」

   奥田さんの店では、魚を切ったり野菜を切ったり、ある程度包丁使いができるようになるまで、早くても3年、大体4年かかるそうだ。そして、ようやく刺身を任せるそうだ。

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