「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
年内に1ドル=130円台の円安を予想する声も
4月19日(2022年)午後の東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=128円20銭台まで下がり、2002年5月以来、約20年ぶりの円安ドル高水準となった。18日発売の「週刊エコノミスト」(2022年4月26日号)はタイミングよく、「とことん考える 危ない円安」と題して特集を組んでいる。
巻頭記事は、「『双子の赤字』とインフレ 『有事の円売り』が始まった」と書いている。
資源や穀物高に伴う貿易赤字の拡大や経常赤字が、円安やインフレ、金利の上昇圧力を高めている、と指摘。垂れ流し続ける財政赤字と累積する政府債務を持続できるかどうか、日本は大きな岐路に立たされているというのだ。
円安が進む要因を2つ挙げている。
1つは、欧米主要国との金利差拡大。8%に迫るインフレ抑制のため3月から利上げをスタートさせた米国は、5月にはコロナ対応として始めた金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」に進む動きだ。英国も利上げをスタートさせ、欧州中央銀行も年内の利上げを市場は視野に入れているという。
一方の日銀は、異次元緩和を続ける姿勢を崩さない。
「教科書通りに利上げに向かうドルが買われ、金融緩和を続け金利が低い円が売られる格好だ」
と為替アナリストは指摘している。
もう1つの円安要因が、原油やガス、穀物など国際商品価格の高騰を背景にした、日本の貿易赤字の拡大や経常収支の赤字化だという。市場では「年内に1ドル=130円台の円安」を予想する声も出てきたという。
目次には「国力の衰えと円安は連動する」「低成長、低金利、経常赤字 『日本売り』が始まった」「過去の遺産で食いつなぐ『債権取り崩し国』への道」などのタイトルが並び、関係者の悲痛な声が聞こえてくる。
なかでも、藤巻健史氏(フジマキ・ジャパン代表取締役)は、「ハイパーインフレと日銀 新中央銀行、新通貨しかない」という「奇策」を提言している。第二次大戦後のドイツで前例があるそうだ。それほどに深刻な事態なのかと衝撃を受けた。
なぜ過去最高の中学受験者だったのか?
「週刊ダイヤモンド」(2022年4月23日号)の特集は、「わが子に最強の中高一貫校&小学校&塾」。受験情報にも定評のある同誌が、コロナ禍で受験者が急増した中学入試の動向を徹底分析している。
激しさを増す小学生の中学受験。首都圏の受験者数は5万1100人と、これまでのピークだった1991年を上回り、過去最高となった。受験校と塾はどこを選ぶべきなのか、選び方を伝授している。
今年の傾向について、森上教育研究所の森上展安代表は、「22年入試は、共学校、とりわけ東京23区の受験者増が著しい」と話している。
また、SAPIXの広野雅明教育情報センター長は、大きく2つの特徴があるとしている。1つは立地のよい名門伝統校の復活だ。京華や暁星、獨協、跡見学園、実践女子学園など、好立地の伝統校が受験生を集めていること。
もう1つは、グローバル教育を重視する学校の人気だ。渋谷教育学園幕張、同渋谷や広尾学園、かえつ有明、三田国際学園、開智日本橋学園、広尾学園小石川といった、海外留学や海外大進学を見据えた教育が売りの学校の受験者が増えているという。
中学受験が過熱する理由として、コロナ禍によって、公立中学の教育に対する不安が広がったことが挙げられる。また、学校選択の多様化が進み、必ずしも難関校志向ではなく、わが子にあった教育環境を選ぶ親が増えているという。
大学付属校のブームには、ちょっとした異変があったようだ。
早慶付属校の多くが持ち直した一方で、MARCH系が軒並み受験者数を減らし、変わって東洋大京北や専修大松戸といった中堅私立大の付属校が受験者数を伸ばした。両校とも他大学への進学実績もあり、内部進学と他大学受験の両にらみが可能な「半付属校」人気が続きそうだ、と見ている。
都立中高一貫校の倍率は軒並み下落した。一時は10倍近くまで高騰したことがあるが、22年は10校中9校で倍率5倍を切る異常事態となった。
その原因は、「適正検査」という公立校特有の入試の難しさが広く知れ渡ったからだ、と安田教育研究所の安田理代表は指摘している。
適正検査とは、国語、算数、理科、社会を組み合わせた教科横断型の出題形式で、知識よりも思考力や論述力が問われる。ちなみに、都立校受験組の「おこぼれ」を取り込むべく、私立でありながら適正検査を模した入試問題を出題する「便乗型」の中高一貫校が台頭しているというから面白い。
関西はどうか。中学受験者数は1万6892人と前年から187人減らしたが、受験率は9.74%で前年から0.1ポイント増と、13年以降最も高い数字となった。ついに関西へ中学受験ブームが到来、と見る関係者もいる。
中身を見ると、灘などの難関校が軒並み志願者を減らすなど、これまでとは異なる傾向があるという。中堅校の雲雀丘学園、三田学園が志願者を伸ばした。
中学受験に欠かせないのが、「塾」の存在だ。四谷大塚、日能研、SAPIX、早稲田アカデミーの四大塾の合格者数の一覧を掲載している。子どもの学年や目指している学校の難易度によって選ぶべき塾は変わるそうなので、参考になるだろう。
さらに、中学受験以上に加熱している小学校受験にも触れている。小学校受験は親の「デキ」が合否を分けるという声を紹介している。面接や願書を通じて、家庭の学校への理解度や教育方針、教養が確認されるからだ。塾選びの情報も豊富だ。
年金の繰り下げ延長...何歳まで長生きすればトクか?
「週刊東洋経済」(2022年4月23日号)の特集は、「年金の新常識」。この4月から変わった年金制度を総まとめし、「長生きリスク」への対応を追求している。
モデル年金の金額を示している。夫婦で月22万円が今の標準だ。
内訳はこうだ。
夫が会社員で、老齢厚生年金が9万円、老齢基礎年金が6.5万円の計15.5万円。妻は専業主婦で老齢基礎年金が6.5万円。あくまで、モデルだから、これよりも多い人も少ない人もいるはずだ。
22年度から大きく変わったのは、「受給開始年齢の繰り下げ延長」だ。通常、年金を受け取る年齢は65歳が原則だ。ただし、本人が希望すれば、60~70歳の間で、もらう年齢を自由に選ぶことができる。それが今回の改正で、最長75歳まで延長された。
本来もらう65歳から動かすと、どうなるか。年金の受給を1か月繰り下げるごとに、金額が0.7%増える仕組みになっている。1年間繰り下げれば、8.4%増となる。
したがって、5年間繰り下げて、70歳から受給を開始すれば、42%増。10年間繰り下げ、75歳で受給を開始すれば、84%も増えることになる。反対に、受給を繰り上げれば、1か月ごとに0.4%減る。
繰り上げか繰り下げかを選択する根本的な要因は、「寿命」だ。寿命は誰も分からないが、受給開始年齢別の損益分岐点は計算できる。
たとえば、70歳で受給を開始する場合、81歳まで生きて年金をもらい続ければ、65歳受給開始を総額で追い抜く。75歳受給開始の場合は、86歳まで年金をもらえば、65歳開始を追い抜く。「およそ11年超が損得の分かれ目」と書いている。
男性の平均寿命は81.64歳、女性は87.74歳だが、これらは平均値である。男性の死亡者数のピーク(中央値)は89歳、女性は92歳だから、思いのほか遅い。長生きできる「自信」のある人は、年金の繰り下げを選んだ方がトク、と結論づけている。
しかし、実際に繰り下げ受給をした人は少ない。国民年金の場合、繰り下げ受給した人は1.5%、繰り上げ受給した人が12.4%。厚生年金では、繰り下げが0.9%、繰り上げが0.4%だ。貯えや健康状態、人生観の違いなど、どちらを選択するかは人それぞれだ。
2つ目の改正のポイントは、短時間労働者への厚生年金の適用拡大だ。パートも厚生年金を受け取れるケースが拡大したのだ。
すでに16年10月には、週20時間以上、賃金月8.8万円以上、勤務期間1年以上、501人以上の事業所、学生でないことをすべて満たす短時間労働者は、厚生年金(および健康保険)に加入できるようになった。
これが22年10月から、勤務期間は「2か月超」、事業所は「101人以上」へ、さらに24年10月からは「51人以上」へと引き下げられ、対象者が一気に拡大する。
3つ目の改正ポイントは、在職老齢年金の減額基準引き上げだ。
改正前の22年3月まで、60~64歳の人は給与と年金を合わせた合計額が月「28万円」を超えた場合、原則として、超えた額の2分の1に当たる年金が支給停止となっていた。これが改正後の22年4月からは、基準が月「47万円」へ拡大され、給与をもっと稼いでも年金を削られなくなる。
また、65歳以上で働きながら年金を受給すると、毎年、もらう厚生年金の額が増えていく「在職定時改定」が導入され、働いているうちは年金が毎年上積みされていく。
リタイヤ後の生き方をどう描くか、現役時代から考えておくことが大切だ。
(渡辺淳悦)