最近は女性の進出も著しい「建築」「建設」「鳶(とび)」「解体」「電気工事」といった現場仕事。かつては「3K」(きつい・汚い・危険)などといわれて、マイナスイメージがつきまとったものだが、いまはどうなのか。
転職支援サービスの「ビズヒッツ」(三重県鈴鹿市)が、現場仕事のメリットとデメリットの生の声を経験者から聞いた「現場仕事できついことランキング」(4月14日付)という調査を2022年4月14日に発表した。
近年の建築・建設業界では「新3K」を打ち出すところが多い。すなわち、「給与・休暇・希望」である。調査から見える現場仕事の「新旧3K」の姿とは...。
「健康的になれて、達成感・充実感がある」
ビズヒッツのプレスリリースでは、「現場仕事できついこと」の調査結果を先に掲載しているが、ぜひここは仕事をボジティブにとらえ、「現場仕事をしてよかったこと」の調査結果から先に紹介したい。
現場仕事の経験者に「よかったこと」を聞くと、1位「体力がつき健康的になった」と、2位「達成感・充実感がある」が、3位以下を大きく引き離した=図表1参照。この2つは、現場仕事の醍醐味といえるだろう。
1位の「体力がつき健康的になった」人からはこんな経験談が聞かれた。
「健康的な体になれた」(18歳・男性)
「早寝早起きで健康にいい。太らない」(24歳・女性)
「上半身にパッと見でも分かるぐらいの筋肉がついたことでしょうか」(37歳・男性)
「身体が鍛えられた」「早起きが習慣になった」などの意見も寄せられている。たとえば、ジムでトレーニングしなくても健康的な生活や体を保ちやすくなるのは、体を動かす仕事だからこそのメリットだ。
「現場仕事を経験してからは休日も身体を動かしたくて仕方なくなり、転職後もランニングしている」と、プライベートの習慣が変化した人もいた。8位以下に「仕事後のご飯がおいしくなった」という声もあり、事務職系の仕事ではちょっと味わえないよさだろう。
2位の「達成感・充実感がある」人からはこんな声があがった。
「汗をかいて何かをやり遂げる充実感がありました」(20歳・男性)
「完成した物件を見ると『やった!』という気持ちになります」(31歳・女性)
「『人々の生活に役立っているんだな』と思いました」(43歳・男性)
とくに、建設・建築の現場では「実際に建物や施設ができあがったときの達成感」を挙げた人が目立った。「仕事がかたちになって残る」「クライアントからの感謝の言葉がうれしい」のは大きなメリットだ。
「スキルが身につくし、稼ぎもよい」
3位の「スキル・技術が身についた」人からはこんなケースが紹介された。
「重機やダンプの運転に慣れた。基礎工事や外装工事の技術がある程度身についた」(41歳・男性)
「技術や知識は本人次第でかなりあがる」(24歳・男性)
「次の作業につなげるための『効率良い段取り』を考えられるようになった」(36歳・男性)
現場仕事ではさまざまな技術が身につくだけでなく、職場によっては資格取得支援制度もあるので、クルマの大型運転免許などもとることができる。また、「段取り」「コミュニケーションスキル」などが身についたという体験談もあった。
4位の「稼げる」も現場仕事の魅力の1つだろう。
「一番よかったのは収入面です。若くても日当が高いので、仕事に出れば出るほど稼げました」(25歳・男性)
「仕事が終わればその場でお金がもらえる」(33歳・女性)
「夜間作業になるため作業単価がよかった」(42歳・男性)
現場仕事は危険も多いため、特別な手当がつき、高収入になる傾向がある。夜勤がある職場なら、深夜割増賃金や深夜手当の支給も。日払いの現場ならすぐに収入が入るメリットは大きい。
「身体がしんどいし、屋外現場ではトイレが心配」
一方、こうした現場仕事のメリットとは裏腹に、デメリットに挙げられるのが「キツイ」ことだ。
現場仕事経験者に「現場仕事でキツイこと」を聞くと、ダントツで1位になったのが「身体がしんどい」だった=図表2参照。体力勝負で行う仕事だから納得の結果だが、1位の「身体がしんどい」人からはこんな声があがっている。です。
「『夏の昼間』と『冬の夜勤』は若くても体力的にキツイ」(20歳・男性)
「(重さが)20キロにもなる柵の束を担いで山を登らないといけなかった」(25歳・男性)
「鳶(とび)仕事は仕事がハードなのはもちろん、重量物を扱うので腰や背中をよく痛める」(36歳・男性)
「重いものを運ぶのでしんどい」「夏の暑さと冬の寒さがこたえる」などの回答が目立った。空調が効かない屋外の現場で作業することが多く、適切に休憩や水分をとっても「キツイ」と感じる人が少なくない。
2位の「人間関係が難しい」人からはこんな指摘があった。
「すぐに叱りつける上司が多い」(25歳・男性)
「会社にもよると思いますが、グループに入れないと仕事にならない」(39歳・男性)
現場仕事ではちょっとしたミスがケガなどの危険につながるため、新人を厳しく、キツイ口調で指導するベテランは多い。周囲の音に負けないよう、大声を張り上げて叱る人もいるため、初めは「怖い」と感じてしまう人もいるようだ。
3位の「衛生環境が悪い」は、現場仕事ならではの課題だろう。こんな声があった。
「埃や粉塵(じん)が凄くて、マスクをしていても喉がイガイガした」(22歳・男性)
「トイレが和式だったり、水洗ではなかったりする」(23歳・男性)
屋外の職場に共通してみられた意見は「トイレ問題」だ。仮設トイレに抵抗がある人や、トイレが遠い現場も多いからだ。
また、5位の「危険と隣り合わせ」も現場仕事ならではの悩みだ。
「高所作業もあり危険を伴う」(30歳・男性)
「機械設備や電気設備工事も関わってくるので、事故のリスクも増加します」(36歳・男性)
「一歩間違うと大事故につながるため、緊張感がずっと必要」(45歳・女性)
実際に、ヒヤリとする場面に遭遇した経験がある人も複数いた。また、「小さなケガは日常茶飯事」という声も寄せられた。
このように、メリットも大きい半面、デメリットも少なくない現場仕事。どういう人が向いているのだろうか。現場仕事経験者に「現場仕事が向いている人の特徴」を聞くと、1位「健康で体力がある」、2位「精神的にタフ」、3位「コミュニケーション能力がある」と続いた=図表3参照。「体育会系」の人は向いているのかもしれない。
調査は、現場仕事の経験者407人(男性361人・女性46人)を対象に、2022年1月30日から2月17日までインターネットでアンケートを行った。
(福田和郎)