交通政策審議会で、運賃のあり方の見直し作業進む
今回値上げするJR東西にJR東海を加えたJRの本州3社は民営化後、消費税増税時を除いて値上げしていない。他の私鉄も同様に、近年はほとんど値上げしていない。その背景には、値上げしにくい制度の問題があるとの指摘もある。
鉄道運賃は「上限認可制」が採用されている。運賃は上限を認可され、その範囲内であれば、届出により設定・変更が可能というもの。国は「上限認可制のもとで季節別、時間帯別など多様な運賃の設定が可能」というが、大半の運賃が上限に張り付いているのが実情だ。
もう一つの問題は、「上限」の決め方。
改定後の運賃が人件費、経費、減価償却費、支払利息といった原価に、適正な利潤を含めた「総括原価」を超えないことになっているが、その原価計算の期間は平年度3年間とされている。
コロナ禍の期間は平年度ではないと考えれば、過去2年間の収入の激減は原価計算に反映されないが、テレワークの定着などを考えると、コロナ前に戻るとは考えられない。
さらに、人口減少時代を迎え、沿線人口の減少基調にあるから、地域によっては過疎化が深刻だ。また、温暖化による自然災害への対応や駅のバリアフリー、列車内の安全対策など、これまで以上に設備投資も必要だ。
コロナ禍に加え、こうした構造的ともいえる諸問題を抱え、鉄道会社の間では柔軟な運賃設定を求める声が強まっている。
国の交通政策審議会の「鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会」で、運賃制度の見直し作業が2月から始まっており、6月に報告がまとまる予定だ。
鉄道会社を取り巻く環境が厳しさを増す中、どのような結論になるか、国民の生活にも直結するだけに、注目される。(ジャーナリスト 白井俊郎)