対ロシア制裁の副作用に「基軸通貨としてのドルやユーロの地位が低下」
蔵納氏と同じく、今回の対ロシア経済制裁をきっかけに国際通貨システムが分断に向かい、逆に基軸通貨としてのドルやユーロの地位が低下するのではないか、と懸念するのが大和総研ロンドンリサーチセンター・シニアエコノミストの菅野泰夫氏だ。
菅野氏のリポート「対ロシア制裁が生んだロシア鉄道デフォルトの背景とその副作用 官製相場からの脱却を加速させるルーブル」(4月18日付)では、プーチン大統領はアジアの友好国にエネルギー輸出を加速させており、決済通貨も双方の自国通貨で可能とする姿勢を見せ始めている、と指摘する。
「世界のエネルギー貿易の構造変化などを理由に、決済通貨のドル離れが加速し、海外投資家(特に中東や東南アジアなどのソブリン・ウエルス・ファンド=政府系ファンド)が、米国債やユーロ圏国債の保有を敬遠するようになれば、基軸通貨としての地位は加速度的に危うくなる」
菅野氏は、とくに中東や東南アジアの政府系ファンドの間に、決済通貨としてドル・ユーロを持つと、ロシアのように資産凍結などの制裁ツールに利用されることを敬遠する動きが広がっていると指摘するのだ。だから、
「対ロシア制裁の副作用は、エネルギー価格高騰を受けた生活苦に直面する国民が急増することだけでなく、基軸通貨としてのドルやユーロの地位が低下することに、多くの国が気づいたことにあるともいえるだろう」
と、結ぶ。
つまり、経済制裁でロシアに勝っても、西側のドルやユーロ圏にとって将来、大きな代償を払わされることになりそうなのだ。
(福田和郎)