円安の進行とエネルギー価格高騰による物価高などに対応するため、岸田文雄政権が緊急経済対策の策定を進めている。が、7月にある参議院選挙を見据えてのことだろうか、「バラマキ」的な対策案情報が流れてくる。
これに対して、「痛み止めの一時的な効果しかない。長期的な対策を行わなくては!」「そもそも今、緊急経済対策が必要なのか?」...エコノミストたちの目は厳しい。
補正予算を組むと...自民党には気がかりな「ジンクス」が
政府は、2022年4月末までに物価対策を中心とする緊急経済対策を発表する見通しだ。報道をまとめると、(1)原油高への対応、(2)食料やエネルギーなどの安定供給に向けた調達先の多様化、(3)中小企業への資金繰り支援、(4)コロナ禍で困窮する人への支援強化――の4つが柱となるとみられる。
与党の自民・公明両党からはさまざまな提案が出ている。たとえば、自民党は困窮世帯を対象に一律1人10万円の給付を求めている。また、電力の安定供給の確保に向け、「原子力を含め、あらゆる電源の最大限の活用を進めるべきだ」と、現在9か所で再稼働している原子力発電のさらなる拡大に踏み込んだかっこうだ。
さらに、自民党はガソリン価格の上昇に備え、4月末までとしている補助金制度を5月以降も継続したうえで、必要に応じた補助金の増額も要求している。しかし、国民民主党などが要求している、ガソリン税などを免除する「トリガー条項の凍結解除」は見送られる公算が強いという。法改正が必要なうえ、国と地方に税収減をもたらすからだ。
一方、公明党は緊急経済対策の財源確保のため、「しっかりした対応が必要だ」(山口那津男代表)として補正予算の編成を強く求めている。しかし、自民党側はあくまで「予備費の活用」で行いたい考えだ。というのも、国政選挙前に補正予算を組むと、選挙対策との批判を浴び、選挙結果が厳しくなるという「ジンクス」があるからだ。
過去、選挙前に補正予算を編成した宮沢喜一政権は1993年衆院選で過半数割れに追い込まれ、日本新党を中心とした野党勢力が結集して細川護熙政権が誕生した。橋本龍太郎政権も1998年参院選で惨敗、橋本首相の退陣につながった。また、麻生太郎政権は2009年衆院選で大敗、民主党に政権交代を許した...といった案配なのだ。
そんなわけで、岸田文雄首相が焦点になっている補正予算を組むのかどうか。また、緊急経済対策がどんな中身になるのかが注目されているが、エコノミストの目は...。