高島屋株5.5%安...営業利益予想「下方修正」を嫌気 コロナ禍「最悪期」より回復傾向も、物価高の影響どうなる?

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   高島屋の株価が2022年4月8日、一時前日終値比64円(5.5%)安の1092円まで下落した。前日取引終了後、2022年2月期連結決算の営業利益予想を下方修正したことが材料となり、投資家の売りを集めた。

   百貨店の売上はコロナ禍の最悪期より回復傾向にはあるものの、なお先行きを不安視されがちなことが明らかになったとも言えそうだ。

  • 百貨店業界にとって、店頭に来てもらうことが収益の前提だ(写真はイメージ)
    百貨店業界にとって、店頭に来てもらうことが収益の前提だ(写真はイメージ)
  • 百貨店業界にとって、店頭に来てもらうことが収益の前提だ(写真はイメージ)

売上高は回復傾向だったが...まん延防止等重点措置の影響ひびく

   4月7日の予想下方修正の後、11日に決算発表されたので、決算と2021年10月公表の予想からの変化をみておこう。

   売上高に当たる営業収益は2021年10月公表の予想(以下同)に比べ、30億円減の7611億円(前期比11.8%増)、営業黒字は19億円減の41億円(前期は134億円の赤字)、経常利益は9億円増の69億円(前期は136億円の赤字)、最終利益は30億円増の53億円(前期は339億円の赤字)だった。

   経常利益と最終利益が従来予想より増える見込みなのは、雇用調整助成金や休業要請協力金などにより、営業外収入が増加したことによるものだ。そのため、「実力」を示す営業利益が従来予想を下回ったことが売り材料とされた。

   2021年9月末の緊急事態宣言の解除とともに、年末にかけて売上高は回復傾向にあった。しかし、年明け以降のオミクロン株の急拡大によってまん延防止等重点措置が実施されたことで消費が減速し、1月と2月の店頭売上高が目標から約7%(70億円弱)下回ったことで営業利益も予想より減った。

   これは、顧客の年齢層が高いこともあって、ネット通販の存在感が薄い百貨店業界は店に足を運んでもらうことが収益の前提となるため、まん延防止等重点措置などの影響をもろに受けたかっこうだ。

3月の既存店売上高、前年同月比6.1%増と好調

   一方、高島屋が決算発表に先立って4月1日に発表した3月の既存店売上高は前年同月比6.1%増だった。

   3月は下旬にまん延防止等重点措置が解除されたことで、消費者が店頭を訪れる機会が増えたことが寄与した模様で、3月のなかでも後半がより好調だった。ただ、この時に高島屋の株価は力強く上昇ということにはならず、その後の営業利益の下方修正には、はっきりと下落で反応することになった。

   こうした株価の動きについて市場では、足元で新型コロナの新規感染者数が下げ止まり傾向にあり、「リバウンド」が懸念されていることが上値を重くしているとみられている。まん延防止等重点措置の発動にいたらなくても、あまり感染者が増えるようだと、外出を控える高齢者が多くなるのではないかという見立てだ。

   昨年末、百貨店で衣類の売上が増えた要因の一つが、「久しぶりに知人との食事会に着ていくため」という「需要」があったことは関係者の共通認識だ。逆に、安心して出かけられない状況は、需要を底上げしなくなる。ウクライナ情勢の悪化に伴う資源など、さまざまな価格の上昇も消費意欲に影響しそうだ。

   さらに、全体として株価が下落傾向にあることも、富裕層の懐に痛手となる可能性もある。今後の高島屋の株価には、これらの要因も影響する可能性がある。(ジャーナリスト 済田経夫)

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