急激な円安が止まらない。急激な物価上昇を抑えるため、利上げを進める米国では金利が高いドルを買い、円を売る動きが加速、2022年4月13日には、一時1ドル=126円台の円安ドル高水準をつけた。
そんななか、帝国データバンクが4月12日、「円安に関する企業の対応状況アンケート」を発表した。 半数を超える企業で「円安対策」を実行、あの手この手の対応に追われている実態が浮き彫りになった。
「販売価格への転嫁」以外に、「燃料費等の節約」「固定費削減」「仕入先・方法の変更」なども
調査によると、円安対策について聞くと、「円安対策を行っている」企業は56.5%と、6割近くになった=図表1参照。業界別にみると、「製造」(68.0%)、「運輸・倉庫」(64.9%)で、6割を超える企業が円安対策を行っている。
一方、「特に何もしていない」企業は43.5%だった。対策を行わない「静観派」は「金融」(22.2%)、「サービス」(37.3%)、「不動産」(42.0%)が目立つ。
また、円安対策を行っている企業に「具体的な対応策」を聞くと(複数回答)、一番多いのが「原材料やエネルギーコスト上昇分の販売価格への転嫁」(31.7%)となった。
次いで、「燃料費等の節約」(24.2%)や「固定費削減」(17.4%)と、企業努力で支出を抑える方法が続く。また、「仕入先・方法の変更」(8.9%)、「既存の仕入価格の変更」(7.5%)が上位に並んだ=図表2参照。
とくに、製造業を中心にコスト上昇分を販売価格へ転嫁するケースが多く、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(56.8%)や「飲食料品・飼料製造」(52.3%)、「化学品製造」(50.0%)では5割を超える企業が価格への転嫁を行っている。
あまりに急な円安で「正直、何もできていません」
対策を行っている企業からはこんな声があがっていた。
「円安については以前から危惧されていたため販売価格を見越して設定している。しかし設定していても利益が薄くなってしまうため、今後は経費削減と人員を最小にして回していこうと思う」(衣服身辺雑貨卸売、東京都)
「やむを得ず製品価格の値上げを行ったが、購買意欲を下げないか懸念している」(菓子製造小売、石川県)
「輸入品については、運賃も高騰しているためルートの精査も行っている」(精密機械器具卸売、東京都)
と、頭を悩ませている企業が多いが、なかにはチャンス到来という企業も。
「自社は海外顧客を多く抱えていることから、円安は売上増、利益増につながる。さらなる拡大で海外顧客比率を上げ、利益増を図りたいと思っている」(専門サービス、神奈川県)
一方、とくに「特に何もしていない」企業からはこんな声が。
「コスト管理と受注計画について、ある程度予測出来ているため、特段対応する必要はないと考えている」(機械器具設置工事、栃木県)
「輸出・輸入の両方あるが、ビジネス的に輸出超過であり、円安は利益拡大に繋がる。そのため静観している」(環式中間物等製造、京都府)
など、さまざまだが、
「あまりにも急な円安のため、『何もしていない』のではなく、何もできていないのが正直なところである」(医療用計測器製造、長野県)
と、なすすべもなく茫然としている企業もあった。
円安は海外取引のない企業にも打撃
今回の調査を受けて、帝国データバンクではこうコメントしている。
「企業の半数超で急激に進む円安に対し対応策を行っています。とりわけ3割の企業でコストの上昇分に対して販売価格への転嫁を行っていました。新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ情勢にともなう原材料価格の高騰・不足が続くなか、急激な円安による仕入コストの上昇は二重の痛手として多くの企業に悪影響を与えています。(中略)燃料や電力などに直結するエネルギーコストの上昇は、直接海外との取引を行っていない企業にとっても大きな痛手となります。政府には、急速に進行した円安に対し影響を受けている企業に向け、早急な対策が求められています」
調査は、2022年4月8日~11日、インターネットで行い、1573社から有効回答をえた。
(福田和郎)