ウクライナ侵攻が電力ひっ迫の日本に追い討ち
「週刊エコノミスト」(2022年4月12日号)の特集は、「世界エネルギー大戦」。ロシアによるウクライナ侵攻が電力ひっ迫の日本に追い討ちをかけている。
福島県沖で2022年3月16日に起きた最大震度6強の地震は、日本のエネルギー危機が現実になろうとした瞬間だった、と同誌は指摘している。
東京電力管内に送電する火力発電所が停止したことで、首都圏を中心に電力供給がひっ迫。他の電力会社から融通を受けるなどして、何とかブラックアウト(大停電)を乗り切った。
日本の電源構成で、LNG(液化天然ガス)は37%まで増加している。日本はロシア極東のサハリン州で石油・ガス開発事業「サハリン2」に参画し、LNGを日本に輸出している。サハリン2からの撤退はしない方向だが、ロシア産LNGの輸入が難しくなれば、日本のエネルギー危機はより深刻になる。
ロシアのウクライナ侵攻は、エネルギー戦争だけではなく、通貨戦争の様相も呈しているという。ロシアへの経済制裁への対抗策として、米欧日などの「非友好国」への債務の返済にルーブル建てを認めたことなどを契機に、ルーブルは反発。4月に入って、侵攻前の水準まで戻している。
中東各国が対露経済制裁に前向きでない現状から、米ドルの影響力低下を指摘する専門家もいる。今後、米ドルに依存しない新たな経済圏が生じる可能性もあり、世界経済は歴史的な転換点にあるかもしれないというのだ。
では、日本のエネルギー戦略は、どうあるべきなのか――。国際大学副学長の橘川武郎氏は「短・中期は石炭火力を再評価。長期でガス田開発に取り組め」と提言している。
原子力については、長期的にはその存続を含めてあらためて真剣に議論すべき時が来た、としている。ロシアは今回、ウクライナの原子力施設に関して、軍事的な攻撃対象とした。軍事標的になるというまったく新しいタイプのリスクが顕在したのだ。
「原子炉建屋を狙ったミサイル攻撃を防ぎきれるのか。たとえ、自衛隊を原発に配置したとしても、周辺の送電設備まで守りきれるのか。これらの点について、改めて検討し直す必要がある」
と、橘川氏は書いている。
熱効率が高く、二酸化炭素排出量が相対的に少ない超々臨海圧の石炭火力発電所の新設工事が、4カ所で2024年には完了する予定だ。短・中期的には、それらが電力の安定供給に貢献するという。
だが、長期的には、石炭火力そのものを停止しなければならない。そこで、アンモニア火力への転換が必要だ、としている。
石炭火力発電所の既存設備を使いつつ、燃料の石炭にアンモニアを混ぜ、徐々にアンモニアの比率を高めていく。やがては、アンモニアだけとなり、二酸化炭素の排出量をゼロにするものだ。エネルギー政策を根本的に見直す必要に迫られている、と問題提起している。
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同誌のもうひとつの特集が「マンション管理新時代」。マンション管理のあり方を大きく変える2つの制度が4月から始まったという。
改正マンション管理適正化法が施行され、全国の自治体が分譲マンションに対し、管理状況を助言・指導したり、是正を勧告したりすることができるようになった。「アメ」と「ムチ」が用意された。
「アメ」になるのが「管理計画認定制度」だ。管理組合の運営や長期修繕計画など17項目で合格すれば、管理が適正なマンションだと「認定」され、さまざまな優遇制度が設けられる。住宅金融支援機構は「フラット35」で認定マンションを購入する場合、ローン金利を当初5年間、0.25%引き下げる制度を始めた。
一方の「ムチ」となるのが、自治体の助言や指導・勧告の制度だ。現時点で強制力はないが、行政が関与できる道を開いた意義は大きいという。
その先に、老朽マンションの建て替え問題がある、と専門家は指摘している。一連の法改正の真の狙いは「マンション版の空き家対策特措法への環境整備ではないか」というのだ。マンションを所有することの責任が問われる時代になりそうだ。
(渡辺淳悦)