観光地東京・浅草は前年の下落から反転...日本人客戻りつつある
商業地は3大都市圏が0.7%上昇(前年は1.3%下落)、地方圏がプラス0.2%(同0.5%下落)だった。ただ、地域的なばらつきは大きい。
3大都市圏では、大阪だけが横ばい(前年は1.8%下落)にとどまり、前年の1.7%下落から1.7%上昇へと急回復した名古屋と明暗を分けた。地方圏も、中核4市が5.7%上昇(同3.1%上昇)となったが、4市を除くと0.5%下落(同0.9%下落)と、マイナスのままだ。
それぞれの地域内でも、地殻変動ともいえる変化がみられる。
東京23区は、多くが上昇に転じる中、中央(1.3%下落)、千代田(1.2%下落)、港(0.3%下落)と、「都心3区」と言われる中心地だけがマイナスになった。テレワークの拡大が響いているのは確実で、オフィス仲介大手の三鬼商事によると、都心3区の2021年12月時点のオフィスの空室率は8.56~4.58%と、コロナ禍前の19年12月の1%台から大幅に悪化し、賃料も低迷している。23年には都心でオフィスが新たに大量供給されることから、厳しい状況が続くとの見方が強い。
23区の商業地で、逆に上昇が目立ったのは再開発が進む中野駅(中野区)や北千住駅(足立区)周辺などで、杉並区、荒川区なども含め、山手線の外側の上昇率が高かった。都心の商業集積地より居住地周辺の店舗を利用する傾向が強まっているとみられ、これもやはりテレワークの広がりが大きな原因といえるだろう。
観光地でも明暗分かれた。東京・浅草は地下鉄浅草駅近くのビルの地価が1.1%上昇と前年の12.0%下落から反転した。外国人はまだまだだが、日本人客が戻ってきているという。
一方、訪日客の来訪で潤っていた地域は厳しい。大阪・ミナミは有名フグ料理店が営業していたビルの地価の下落率は15.5%で、2年連続で全国の商業地で最大になるなど、全国商業地の下落率ワースト10のうち8地点をミナミが占めた。訪日客への依存度が高かった分、反動も大きいということだ。
大手紙経済部デスクは今後の見通しについて、「地価は全般的に言って、コロナ禍による最悪期を脱した程度で、コロナの感染状況はなお不透明なのに加え、ロシアによるウクライナ侵攻の世界・日本経済への影響も懸念され、先行き予断を許さない」と話している。(ジャーナリスト 白井俊郎)